持続可能なカカオ
カカオはネスレの菓子製品、特にチョコレートの主要な原材料です。しかし、カカオの栽培には森林破壊、児童労働リスク、カカオ生産者世帯の生活所得不足など多くの課題があります。
「ネスレ カカオプラン」は、レインフォレスト・アライアンス認証とともに、これらの社会問題や環境問題に取り組み、責任あるカカオのサプライチェーンを構築する措置を講じることを可能とします。ネスレは2025年までに、「ネスレ カカオプラン」を通じて100%のカカオを調達することをコミットしています。
持続可能なカカオ生産に向けた進捗
責任あるカカオ調達のためのアプローチ
「ネスレ カカオプラン」とは、カカオ生産のためにさらに責任あるサプライチェーンを構築するための手段です。ネスレは、生産者やコミュニティ、現地組織や国際的組織と協力して、解決策を生み出して実行しています。
ネスレの活動は3本の柱で成り立っています。
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より良い農業 研修やリソースを提供し、生産者が作物を向上させ、収入を増やし、生活を向上できるように支援します -
より良い生活 児童労働撲滅、女性の地位向上に取り組み、教育を向上させコミュニティが繁栄するように支援します -
より良いカカオ サプライチェーンのトレーサビリティの向上や森林破壊ゼロに取り組みます
「ネスレ カカオプラン」に立脚する、「収入向上プログラム‘(Living Income Accelerator Program)」は、カカオ生産者が抱える多くの課題に取り組み、さらに持続可能なカカオ生産への移行を支援することを目的とします。「収入向上プログラム‘」では、就学、持続可能な農法、アグロフォレストリー、収入の多角化などの活動に対して、生産者に直接金銭的インセンティブが支払われます。
主要な問題に対する解決策を見出すだけではなく、私たちはカカオのサプライヤーがネスレの『責任ある調達基準』を遵守することも目指しています。
「ネスレ カカオプラン」を通じて、ネスレ以外のカカオのサプライチェーンの変革も支援しています。例えば、ネスレは児童労働監視改善システム(CLMRS)を導入しましたが、これは現在、児童労働リスクに取り組むための主要なツールとして多くの企業に採用しされています。
森林破壊に関する透明性の高い報告
ネスレは、2020年から毎年 『森林破壊ゼロへの取り組み報告書(Tackling Deforestation Report)』を発行しています。
報告書は、森林破壊へ対処し、またコートジボワールやガーナのカカオ生産者に環境再生可能な手法を推進するネスレの活動について詳述しています。
報告書の主な内容としては、植樹のために50万本を超える森林樹木をカカオ農園に配布したこと、また森林破壊を防ぐために実施した大規模な農地マッピングの詳細などがあります。
『森林破壊ゼロへの取り組み報告書(Tackling Deforestation Report)』はWCF(世界カカオ財団)のCocoa & Forests Initiative(カカオ&森林イニシアチブ)におけるネスレのコミットメントの一環です。
2021年6月、ネスレは自社のサプライチェーンにおける森林破壊をゼロとする活動を強化するため、フォレスト ポジティブ戦略を開始しました。フォレスト ポジティブとは、サプライチェーンにおける森林破壊リスクの管理だけではなく、より広範な森林資源環境にプラスの影響を与えることを意味します。
複雑なカカオのサプライチェーンにおけるトレーサビリティの確保
ネスレのカカオの多くは、小規模生産者によって栽培されています。ネスレのアプローチは、農業協同組合と協働することです。これらの団体は、個々の生産者からのすべての購入に関するトレーサビリティと記録を提供しています。
ネスレの直接Tier-1サプライヤーは、これらの協同組合との商取引関係を管理し、また関連する場合はレインフォレスト・アライアンス認証をはじめサステナビリティ活動の多くを管理しています。
ネスレのチームは、シェードツリー(日陰樹)の苗畑の管理、協同組合のためのジェンダー研修、ビデオ研修の開発などのいくつかの面を直接管理しています。また、サプライヤーが規模拡大できるような新しいアイデアの試行も行っています。ネスレは協同組合と長期的な関係を築くことを目指しており、複数の協同組合とは8年以上にわたって協働しています。
環境を保護するために日陰の管理を奨励
カカオは日陰で栽培した方が、生育が良く収穫量も増えます。
ネスレの『Net Zero Roadmap(ネットゼロ ロードマップ)』および「収入向上プログラム(Income Accelerator Program)」の一環として、暑熱ストレスや過度の降雨から作物を守るために、シェードツリーをより多く植えるよう生産者に奨励しています。2022年末までに、280万本のシェードツリーを植樹することを目指しています。
また、シェードツリーは水の管理、現地の生物多様性、土壌有機物、炭素隔離の向上を支援するとともに、生産者に新たな収入源をもたらします。
人権を保護する、労働者と子どもの生活を守る
児童労働リスクは、ネスレのカカオサプライチェーンにおける複雑で困難な問題で、貧困、人口動態、教育、インフラ、現地の文化など多くの要因の影響を受けます。ネスレは、西アフリカのサプライチェーンのパートナーや現地コミュニティと協力して、児童労働リスクに対処しています。
2012年から児童労働監視改善システム(CLMRS)を導入し、リスクのある児童を特定し、認識を高め、是正を行うことを可能にしました。
ネスレの是正活動の支援により、危険な仕事に関わっていると判断された子どもたちは、最初のフォローアップ訪問時にその作業を辞めることができました。また、貧困が児童労働リスクの原因となっていることから、カカオ生産者のコミュニティの生活支援も重要な戦略の一つです。
コートジボワールにおけるCLMRSの成功や課題については、『Tackling Child Labor』報告書と『Creating Shared Value and Sustainability report(共通価値の創造とサステナビリティレポート)2021年』をご覧ください。
多くの生産者は、自分自身と家族の生活費を確保するために極めて困難な状況に直面しています。そのため、カカオをより多く栽培するために木を切り倒すなど、持続可能とはいえない選択を迫られることもあります。
そこで、ネスレは、「収入向上プログラム(Income Accelerator Program)」を開始しました。金銭的なインセンティブを用いて、カカオ生産者が持続可能的な経済成長を実現するための行動変容を奨励します。
奨励する活動は、優良な農法の適用、追加的な収入源の導入、子どもの就学継続やシェードツリーの植樹などです。
カカオの生産地には、貯蓄することが難しい個人、コミュニティ、村が多くあります。ネスレは、コミュニティに対するアプローチを通じて、彼らを支援する取り組みを支えています。
定期積立型貯蓄貸付(VSLA)スキームは、安全なボックスに入金された金額や、支援が必要な場合に使用された金額を、誰もがオープンに確認できるようにしています。年次サイクルの終了時には毎年、貯まった貯蓄を利息とともに会員へ還元します。
これは、コミュニティが貯蓄をして、必要な場合に個人を支援できることを示しており、信頼関係を築き、コミュニティを団結させます。また、人々がより大きな買い物のために貯蓄をしたり、あるいは起業したりすることも可能になります。一度研修を受ければ、コミュニティは自分たちで資金を運用できるようになり、村全体がよりレジリエントになることができるのです。
- キャッシュフロー、マージン、ローン、貯蓄、多角化、家計管理の計画と管理
- 栽培するカカオの種類を増やし、また多様化することにより農園を再生
- 生産者のリーダーとなり、アグリプレナー(農業起業家)としての考え方や学びを仲間の生産者に共有
- いくつかの国際会議に参加し、自身の経験を共有
協働によるカカオ生産の変革
ネスレは、カカオのサプライチェーン全体を通じて、社会的基準および持続可能性の基準を向上させるよう尽力しています。そのため、ネスレはWCF(世界カカオ財団)のCocoa & Forests Initiative(カカオ&森林イニシアチブ)の設立以来、熱心なメンバーとして参加しています。
2020年4月に、ネスレがChild Learning and Education Facility(児童学習教育基金)連合に参加したのもこのためです。この組織を通じて、ネスレはコートジボワールの農村コミュニティにおける質の高い教育の展開を支援しています。この連合はJacobs Foundation(ヤコブ財団)が推進しており、ネスレはすでに、カカオのコミュニティにおける教育の変革プログラムの一環として、若年層向けの研修を開発するために財団と提携しています。
さらに、業界のパートナーと協力して、より強力な政策を求めています。さまざまなカカオやチョコレートメーカー、市民社会団体とともに、ネスレは欧州連合(EU)のカカオに関する政策と規制のアプローチに関する共同ポジションペーパーを発表しました。その中で私たちは持続可能なカカオを確保するために、生産国政府とのより強力なパートナーシップに加えて、人権および環境デューデリジェンスの義務化を求めています。