再生農業
ネスレのNet Zero Roadmap(英語版PDF、16Mb)では、温室効果ガス排出量の約3分の2は農業由来であることを示しています。目標達成にはこれらへの取り組みが不可欠です。
私たちは、土壌の健全性の改善、炭素の隔離、食料安全保障の支援、水資源の回復、生物多様性の実現を目指し、再生農業を拡大することで、農業従事者や食品生産者がこの変革に参加できるよう支援しています。
ネスレは、サプライヤーや生産者との連携を通じて、再生農業の農法を導入するよう奨励しています。これにより、温室効果ガス排出量実質ゼロを達成し、自然とコミュニティに恩恵をもたらすことが期待できます。
主要用語の解説
温室効果ガス排出量実質ゼロ
ネスレは、遅くとも2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量のネットゼロを達成することを約束しています。2020年、期限を定めた計画であるネスレのNet Zero Roadmap(英語版PDF、16Mb)を公表しました。これは、当グループの気候戦略の基盤となるとともに、SBTi(Science Based Targets initiative:科学に基づく目標設定イニシアチブ)が認証した1.5℃目標に沿った計画として機能しています。削減しきれない排出量がある場合、それらすべてを質の高い自然気候ソリューションで相殺します。温室効果ガス排出量実質ゼロについての詳しい説明はこちら をご覧ください。
再生農業とは?
持続可能な農業イニシアチブ(SAI)プラットフォームに基づき、ネスレは再生農業を「土壌を中心に、水、生物多様性などの天然資源を保全、回復させながら、土壌や植物に炭素を蓄積し、同時に生産者の生計向上を目指す農業アプローチ」と定義しています。再生農業の実践例には、不耕起・省耕起農法やアグロフォレストリー(森林農業)などがあります。
ネスレ農業フレームワークでは、再生農業へのアプローチを生物多様性、水、土壌の健全性、多様な作付け体系と畜産の統合、集団的および景観的活動という5つの柱に基づいて詳しく定めています。
私たちは、ネスレのサプライチェーンに関わる生産者が再生農業をどの程度導入しているかを指標として、ネスレ農業フレームワークの有効性を評価しています。
私たちはサプライヤーと緊密に連携 しながら、主要原材料のサプライチェーンにおいて生産者が再生農業を導入するために必要なツールと知識を提供しています。
農場でのさらなる再生農業の実践を目指して
* この目標の対象範囲には以下の原材料カテゴリーが含まれます:乳製品(生乳および乳由来製品)、コーヒー、穀類、大豆、野菜、カカオ、パーム油、砂糖、魚介類、肉・鶏肉・卵。
詳細は、2025 Non-Financial Statement(英語版PDF、18Mb)の「Environmental Disclosures」セクションをご覧ください。
再生農業の主な5つの柱
Nestlé Agriculture Framework(英語版PDF、19Mb)に示されたモデルでは、再生農業を生物多様性、水、土壌の健全性、多様な作付け体系と畜産の統合、集団的および景観的行動という5つの柱を通じて実践しています。
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生物多様性 再生農業の実践は、地上と地中の双方の生物多様性に恩恵をもたらします。作付けする作物の多様化、間作、収穫期の合間のカバークロップ(被覆作物)の植え付けによって植物の生命力を高めると同時に、微生物・菌類・動物(無脊椎動物・昆虫・鳥類を含む)の繁殖を促すことで、土壌の養分循環を向上させ、受粉を促し、土壌の肥沃度と生産性を高めることができます。
均衡の保たれた生態系は、生産者の気候変動へのレジリエンスの強化にもつながります。ネスレは、サプライチェーンのマッピングで特定された農場・景観において、農作物を守るシェードツリー(日陰樹)や果樹を提供することで生産者を支援しています。
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ウォータースチュワードシップ ネスレは、農業サプライチェーンにおける水源保護に貢献し、水資源の量と質の改善を支援しています。
スプリンクラー、点滴灌漑、地下灌漑などを取り入れた戦略的な灌漑アプローチにより、表面灌漑より効果的に水の蒸発を抑制しています。さらに、デジタル技術の活用により、土地に水を与えるべきタイミングを的確に見極め、水の過剰使用を防いでいます。
また、化学農薬の投入量を減らし、有機肥料の使用と生物的害虫駆除を最適化することを目指す再生農業の導入を推進することにより、化学物質の流出による水質への悪影響を軽減しています。
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土壌の健全性 私たち、そしてペットが口にする食物を育てるには、耕作地と健全な土壌が必要です。
健全な土壌は「陸上生態系において、生産性・生物多様性・環境バランスを持続させる能力を備えた土壌」と定義することができます。
健全な土壌は、劣化した土壌よりも有機物含有量が多いため、大気中の二酸化炭素をより多く吸収・貯留する能力を備えています。さらに、健全な土壌には水管理においても2つの重要な利点があります。それはその保水力の高さにより干ばつのレジリエンスが強くなること。そして、水の浸透性が高いため、大雨時の流出・侵食・洪水を減らせることです。
ネスレは、土壌の健全性の向上と有機物量の増加に貢献する農業実践の規模拡大を支援するため、ファーマーコネクトプログラムを通じて再生農業の取り組みを展開しています。このプログラムは、生乳、コーヒー、穀類、カカオなど特定のネスレのサプライチェーンにおいて、500,000人以上の生産者と150,000社以上のサプライヤーと緊密に連携しています。
具体的な取り組みとしては、輪作、マルチング、有機肥料の使用、耕起の最小化などが含まれます。
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多様な栽培システムと畜産の統合 再生農業への取り組みの一環として、実現可能で適切な場合には、農業システムへの畜産の統合と放牧の最適化を推進しています。
具体的には、家畜の放牧エリアに樹木を導入する林間放牧の活用や、畜産と農作物の複合農業を取り入れられるよう、生産者を支援しています。
期待される効果には、動植物を強い日差しや風から保護できること、有機的施肥が行われること、水と家畜のふん尿の管理が向上すること、昆虫や鳥類など他の生物に適した生息環境が創出されることなどがあります。ネスレはこれらの成果を正確に測定・報告する取り組みを継続的に進めています。
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集団行動と景観行動 再生農業の実践は、個々の農場を超えて景観全体を視野に入れ、地域的な植林プロジェクト、共有水資源の保護、生物多様性の促進を通じて、貴重な天然資源の保護に貢献することができます。記事を読む
その恩恵は、生産者にとどまらず、地域コミュニティ全体にも、住民の生活向上、収益性の改善、温室効果ガス排出量の削減という形でもたらされます。例えばネスレは、イングランド東部で展開される「景観企業ネットワーク」の取り組みの長年のパートナーとして、複数の消費財メーカー、地方自治体、様々なステークホルダーが協力し、地域の生産者が提供している生態系の安定に対して報酬を送る取り組みに参画しています。
再生農業の導入
再生農業の導入の成熟度を評価するため、私たちは農場評価ツールを開発しました。このツールは、土壌の健全性、生物多様性、水資源、畜産、農場管理に関連する再生農業の実践項目と成果指標で構成されています。また、作物の種類に応じた評価ツールを用いて設計されています。
各ツールにより、対象農場における再生農業の導入成熟度を以下のように分類できます。
- 再生農業への移行段階(レベル1)
- 発展段階(レベル2)
- 先導段階(レベル3)
私たちの中心にある生産者
再生農業は生産者を中心に据えて、それぞれの地域や作物に適した解決策を支援します。伝統的な農法から新しい農法への転換は容易ではありません。そのため、私たちは融資やインセンティブ、研修、そして再生農業を実践する農場で生産された原材料への市場需要の創出を組み合わせた包括的な取り組みをしています。これらは、自力での投資が難しい小規模生産者にとっては特に重要です。この変革はネスレだけでは成し遂げられません。政策立案者が民間部門と協力し、再生農業の普及を促す強力なエコシステムを構築する必要があります。
例えば、コーヒーサプライチェーンに属する小規模生産者が気候変動の影響に対処して、世代が変わってもコーヒー栽培を継続できるようにするために、ネスレは農業科学の知見を活用しています。ネスレの植物科学者と農学者が伝統的な育種方法を用いて開発した新品種「スター4」は、購入者に好まれるブラジルコーヒーの特性を保ちながら、コーヒーさび病などへの耐性を備えたアラビカ種のコーヒー品種です。
コートジボワールでは、「Income accelerator program(収入向上プログラム)」 を通じて、カカオ生産者の収入向上、子どもたちの就学継続、そして地域環境の改善を支援しています。小規模生産者と協力して技術と知識の育成を図り、土壌の質改善のための技術の活用と、多様な作物の栽培を通じて新たな収益源を広げるための技術の習得を促しています。また、カカオの果肉や胎座といった未活用部位を使ってチョコレートフレークを製造するなど、カカオの実からより多くの価値を引き出す革新的な技術 (グローバルサイトへ遷移します)へのアクセスも支援しています。このような取り組みにより、生産者はカカオ収穫から得られる収量と付加価値を高めることができるのです。
インドネシアでは、「ネスカフェ」ブランドにコーヒーを供給する800人以上の小規模コーヒー生産者を対象に、天候保険制度を試験的に実施しています。この保険制度では、気候保険を専門とするブルーマーブル社 と協力し、降雨量の変動や深刻な干ばつなどの予測困難な気象パターンに生産者が対応できるように経済的な保障を提供しています。
調和のとれたアプローチに向けて
2023年に、ネスレは業界大手各社、農業組合、地域コミュニティと連携し、再生農業に関する新たな調和のとれた成果重視のアプローチを模索しました。
持続可能な農業イニシアチブ (SAI) プラットフォームが主導するRegenerating Togetherは、農業生態学的原則に基づいた農業への包括的なアプローチを網羅しています。土壌、水、生物多様性という3つの主要な農業資源を支援し、農業コミュニティに利益をもたらすことを目指しています。
再生農業の実践事例
再生農業の導入に向けた協働
ネスレ フランスは、再生農業へ移行中の農場からの主要原材料の調達を拡大するために、さまざまなステークホルダーと協力しています。アースワーム財団、ケルマップ、インレー、アグロトランスファーに加え、地域のサプライヤーや農業協同組合とのコンソーシアムを通じて、カバークロップ(被覆作物)、輪作、減耕などの再生農業の導入を支援しています。このプロジェクトは、土壌中の有機物を増やし、土壌の肥沃度と収量の向上につなげることを目的としています。
ネスレは、カーギル社およびETG|ビヨンド・ビーンズ社とともに2つのプロジェクトを立ち上げました。どちらのプロジェクトも、カカオのサプライチェーンにおける温室効果ガス排出削減を目的とするものです。これらのイニシアチブはアグロフォレストリー、再生農業、森林再生を推進しており、ガーナとコートジボワールで200万本以上のシェードツリー(日陰樹)の植樹を目指しています。地域コミュニティとの緊密な連携のもとで進めるこれらの取り組みは、温室効果ガスの削減とともに、生物多様性の強化と生産者の支援にも貢献することが期待されています。
酪農の変革を生産者が支持
ブラジルのNature por Ninho ®認証プログラムは、再生農業の実践を導入した生産者に報酬を提供しています。「Nestlé Agriculture Framework(英語版PDF、19MB)」の発展段階(レベル2)に達した100人以上の生産者からは、土壌の健全性と生物多様性の改善や、水資源へのポジティブな影響が報告されています。
英国において、ネスレは700名の組合員を擁する酪農協同組合であるFirst Milkと20年以上にわたって連携してきました。両者が共同で実施するリジェネラティブ・ミルク・プランは、土壌の健全性、生物多様性、炭素削減を柱とするイニシアチブです。First Milkの組合員であり、ネスレのチョコレートおよびコーヒー製品用の生乳を供給している約75名の生産者が現在、輪換放牧、牧草地への多様な草種の植え付け、化学肥料の削減、樹木や生垣の導入、動物福祉の優先といった再生農業の原則に基づく農業を実践しています。
サプライヤーの教育および訓練、そしてイニシアティブの強化に重点を置きます。これはすべて、再生農業を正しい方向に進めるという私たちの決意の一環です。

