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座りすぎによる健康リスクや会社全体への影響は?会社でできる座りすぎ対策などご紹介

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更新日:2024/10/22

会社で働いている時に、デスクワークで1日中座っている人も多いのではないでしょうか。座りすぎの状態が続くと個人の健康や会社全体へ影響を及ぼすおそれがあります。

本記事では座りすぎによる健康リスクや仕事での影響、会社でできる対策として簡単なストレッチやエクササイズのやり方などをご紹介します。健康的なライフスタイルや働き方を実現するために、座りすぎ対策を取り入れてみませんか。

日本人は座りすぎ問題が課題に

座りすぎによる問題は日本全体における課題となっています。調査によると、日本は調査対象となった世界20ヶ国のうち平日の座位時間が最も長い国です。*
*参考:Bauman AE et al.: Am J Prev Med. 41(2)(2011)

また日本におけるデスクワーカーは座位時間の割合が約63%で、立ち仕事や歩き仕事の人に比べて圧倒的に多くなっていることが報告されています。さらに休日においてはデスクワーカーだけでなく、平日に立ち仕事・力仕事をしている人も座位時間の割合が60%近くになり、仕事内容によらず座位時間の割合が多くなっています。*

*参考:Kurita et al.: BMJ Open 24;9(2) (2019)

座りすぎによる健康へのリスク

座りすぎると心身の健康リスクにつながる可能性があります。考えられる健康リスクについて詳しく見ていきましょう。

2-1. 腰・肩・首の痛み

座りすぎは腰や肩、首への負担を増加させる原因のひとつです。1976年頃に明らかになったスウェーデンの整形外科医ナッケムソンの報告によると直立での腰部への負担を「100」とした場合、座った状態で「140」、座った状態で前傾姿勢(パソコンをみて猫背になっている状態)を取った場合は「185」まで増えており、座り方によって腰や肩、首への負担が変わると示されています。*

*参考:スウェーデンの整形外科医ナッケムソンの報告 NACHEMSON A :THE LUMBAR SPAIN.AN ORTHOPAEDIC CHALLENGE.SPAIN 1:59-71,1976

また「NIOSH(米国国立労働安全衛生研究所)の職業性ストレスモデルを腰痛に当てはめた新腰痛モデル」には、職場での長時間の座位作業も腰痛の要因として含まれています。

よって座っている時間が長いと腰痛につながる可能性があるといえるでしょう。

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2-2. 肥満につながる

座位時間が長いとカラダを動かしている時間が短くなり、肥満につながるリスクが高まります。肥満は食習慣が変わったり身体活動量が低くなったりして消費エネルギーよりも摂取エネルギーが上回った結果、余ったエネルギーが体脂肪として蓄積された状態です。

今までは肥満家系かどうかが重視されてきましたが、遺伝よりも家族の食習慣や運動習慣を見直す必要があると考えられるようになりました。肥満は糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病など多くの疾患の原因になる可能性も高い*ので、肥満になる前から対策するのが良いでしょう。
*出典:肥満と健康 | 厚生労働省 (https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html)

座りすぎを中断して運動するなど身体活動量の時間を増やすと、肥満対策にもつながると考えられます。

2-3. 疾患発症リスクの増加につながる

座位時間が長く身体活動時間が減ると血圧の上昇や心血管内皮機能の低下などから心血管性疾患につながったり、肥満やインスリン抵抗性の増大、血中脂質の増加などから内分泌系機能が低下して代謝性疾患につながったり*する可能性が報告されています。

有酸素運動による作用で発症リスクの低下につながるのが、心血管性疾患である高血圧への対策です。代謝性疾患である肥満には身体活動による蓄積された脂肪のエネルギーとしての活用が、インスリン感受性には筋収縮による作用が、脂質異常症には身体活動に伴う筋血流増加による作用が、対策につながるといわれています。*

*出典:「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:身体活動による疾患等の発症予防・改善のメカニズム | 厚生労働省 (https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-00-009.html)

2-4. メンタルヘルスにつながる

うつ病や不安、ストレス、認知機能低下といったメンタルヘルスにも影響する可能性があるのが、座りすぎによる身体活動時間の減少です。*

運動などの身体活動を行うと、記憶を司どる海馬の萎縮抑制や神経伝達物質や成長因子の増加につながると報告されています。つまり長時間座っている状態で過ごしていると、精神的な健康のリスクも高まるといえるでしょう。*

*出典:「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:身体活動による疾患等の発症予防・改善のメカニズム | 厚生労働省 (https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-00-009.html)

座りすぎによる会社への影響

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仕事や職種によっては座位時間が長くなりがちですが、座りすぎが企業に影響を及ぼす可能性もあります。

3-1. 生産性の低下

座りすぎは仕事の生産性にも深く関係しています。就労中の座位行動と生産性の関係を調査した研究では、座位時間の割合が多い人は少ない人と比較すると「仕事の効率が低い」との回答率が高いという結果でした。*

*参考:Ishii et al.: J Occup Environ Med 60(4) (2018)

3-2. ワーク・エンゲイジメントの低下

座位時間はワーク・エンゲイジメントにも関係しています。ワーク・エンゲイジメントとは仕事への活力・熱意・没頭などの状態を表す言葉です。就労中の座位行動とワーク・エンゲイジメントの関連を調査した研究において就労中に座っている時間の割合が多いグループは少ないグループよりも、ワーク・エンゲイジメントの3つの項目すべてにおいて「低い」という回答比率が高くなっています。*

*参考:Ishii et al.: J Occup Environ Med 60(4) (2018)

3-3. 経済損失

首の痛みや肩こり、腰痛、メンタルヘルスといった問題は国家規模での経済損失につながっている報告もあります。1万人の日本人就労者を対象とした調査において、仕事に支障をきたす心身の不調14項目の中でも特に多かった3項目が首の痛みや肩こり(528人)、腰痛(469人)、メンタルヘルス(316人)でした。*

それに伴う1人当たりの経済損失は首の痛みや肩こりで45,535円、腰痛で44,824円、メンタルヘルスで51,651円、国家としての経済損失はそれぞれ3兆1千億円、3兆円、3兆5千億円と推定されています。*前述の通りこれらの不調の原因として座りすぎが関係しているケースも多く、社会的な問題として捉える必要もあるでしょう。

*参考:Yoshimoto T et al.: J Occup Environ Med 62(10) (2020)

会社でできる座りすぎ対策

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会社でもすぐに座りすぎ対策を取り入れられます。例えばネスレ日本で取り組んでいる座りすぎ対策には、座りすぎがもたらす健康リスクや職場でできる筋力トレーニングなどを学ぶ社員向けイベントを実施し社員への啓発に役立てる、というものもあります。

このようにオフィスでできる対策を具体的に紹介していきます。簡単にできるので、ぜひ本日から生活に取り入れてみましょう。

4-1. 意識や行動を変える

まずは意識や行動を変える必要があります。座っている間は正しい姿勢を保ち、30〜60分に一度は立ち上がってこまめに動きましょう。

4-1-1. 正しい姿勢を保つ

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パソコン作業などで座っている間は以下のポイントを抑えて正しい座り姿勢を意識します。*

  • 椅子に深く腰掛ける
  • ディスプレイは目から40cm以上離す
  • パソコン画面の上端は目の高さに合わせる
  • 足の裏全体を床に付ける

適切な座り方を実践し腰や肩、首にかかる負担を軽減しましょう。

*出典:情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン|厚生労働省 (https://www.mhlw.go.jp/content/000580827.pdf)

4-1-2. こまめに動く

座りすぎなどによって長時間同じ姿勢を取ることはカラダへの負担となりやすいため、こまめに動く意識をしましょう。

オフィス内でできる方法としては「備品を立って動かないと取れない位置に置く」「話をするために相手のデスクに出向く」「定期的に立ち上がって伸びをする」などです。

4-1-3. 30〜60分に1回は立ち上がる

目安として30〜60分ごとに立ち上がるだけでも、座りすぎを軽減できる可能性があります。作業用タイマーなどのツールを使って一定時間後に通知が入るように設定すれば、立ち上がる習慣を身に付けやすいでしょう。少し時間があれば立ち上がった後、軽くストレッチを取り入れるのもおすすめです。

4-2. グッズを活用する

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座りすぎによるカラダへの負担を軽くするためにグッズを活用するという方法もあります。オフィスで使えるグッズを2つご紹介します。

4-2-1. クッション

機能性の高いクッションを活用すると、前述した正しい座り姿勢を維持しやすくなります。ランバーサポート付きのタイプであれば背骨の自然なS字カーブをサポートしてくれたりクッションタイプであれば体圧を分散してくれたりするので、特性を踏まえて活用しましょう。

4-2-2. ノートパソコンスタンド

ノートパソコンをデスクに置いて使う方は前傾姿勢になって腰や肩、首の負担が大きくなりがちです。そこでノートパソコンスタンドを活用すれば、ディスプレイの位置が高くなり視線が上がって正しい座り姿勢を維持しやすくなります。またキーボードに傾斜がかかるため、タイピングもしやすくなるでしょう。

4-3 環境を整える

座りすぎを解消して健康増進につなげるために、オフィス環境を整える方法もあります。

4-3-1. スタンディングエリアをつくる

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最近は健康増進や生産性向上のために、スタンディングエリアを設ける企業も増えています。スタンディングデスクを導入して立ったまま仕事や会議をするエリアです。

ネスレ日本ではオフィスの一部に立ったまま使える机を導入しました。実際に使用している社員からは「意外と疲れない」「座りすぎに気をつける意識が高まった」といった感想が出ています。

スタンディングデスクはユーザーの体格や好みに合わせて高さを変更でき、座り時間の削減に役立ちます。長時間立ち続けるのがつらい場合には電動式のタイプなど簡単に高さを変えられるものを選び、立つ時間と座る時間をバランス良く取り入れると良いでしょう。

4-3-2. 運動機会を提供する

全社的な取り組みとして運動機会を設ける方法も有用です。

スポーツエールカンパニー2021認定企業の取り組み例を参考にすると、全社員に歩数を確認できるスマホを配布したりスポーツトレーナーや産業医の協力を得て制作されたオリジナル体操を毎日始業前に実施したりしています。

4-3-3. コーヒーブレイクを取り入れる

コーヒーブレイクとは仕事の間にコーヒーを飲む小休憩を指します。仕事を中断して自席から立ち上がり休憩室などにコーヒーを取りに行くため、コーヒーブレイクをとると座位時間を減らすことが期待されます。

コーヒーブレイクの習慣をオフィス全体として取り入れると、座りすぎの中断が進んで快適に働ける職場づくりにもつながるでしょう。

コーヒーブレイクを取り入れるメリット

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コーヒーブレイクという機会を取り入れて期待できるメリットについて、身体的な面と精神的な面に分けて紹介します。

5-1. 身体的なメリット

小休憩でコーヒーを淹れようとすると自席から立ち上がって移動する必要があるため、座りすぎの状態を避けられます。また前述したように座りすぎの時間を減らしてその分活動時間に当てると、腰・首・肩の痛みや肥満、メンタルヘルスの軽減などの健康リスクの低下にもつながる可能性が高まるでしょう。

5-2. 精神的なメリット

ブレイクタイムの導入によって気分転換などが期待できます。休憩すると心身を休められたり、コーヒーブレイクを行うエリアに行った時に同僚や仲間がいると自然にコミュニケーションが取れたりするためです。
 

会社でできる座りすぎ対策のエクササイズやストレッチ

長時間座っていると血行に影響するおそれがあるため、少しでも足やカラダを動かす時間を増やして対策につなげましょう。ここでは職場でもできるエクササイズやストレッチを紹介します。できるものから始めてみてください。
運動するときには、下記に注意して行ってください。

  • ここで紹介するストレッチや筋トレのキープ時間は目安です。ご自身のカラダの状態にあわせてキープ時間は調整しましょう。
  • 運動中は呼吸を止めないようにしましょう。
  • 痛みがある場合は、無理をせず運動を止めましょう。
  • 腰痛などの症状がある人は医療機関にご相談ください。

6-1. 座ったままできるエクササイズやストレッチ

椅子に座った状態でできる上半身や肩、肩甲骨、下半身の簡単な運動を紹介します。

6-1-1. 上半身の運動

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椅子に座ったままできる体幹のストレッチです。

  1. 椅子に座り、片方の手を上に伸ばして、もう片方の手で椅子の縁を持つ
  2. 背伸びをするイメージで、息を吐きながら上に伸ばした腕の反対側に向かってカラダを横に反らし、10~30秒姿勢をキープする
  3. 反対側にも同様に行う

6-1-2. 肩〜肩甲骨の運動

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肩のストレッチは、以下の手順で行います。

  1. 座った状態で片方の手を反対側の肩の方へ伸ばし、もう片方の手で肘を抱える
  2. 肩から二の腕にかけて伸びているかを確認し、そのまま30秒キープする
  3. 反対側も同様に行う

6-1-3. 下半身の運動

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座ったまま足を動かすレッグレイズのやり方を紹介します。

  1. まずはインナーマッスルを鍛えるエクササイズであるドローインの基本姿勢を取るために、椅子の真ん中に座って両手をお腹にあてて鼻から息を吸う
  2. ゆっくり息を吐きながらお腹をへこませ、そのまま呼吸を繰り返す
  3. 2の状態をキープしたまま、もも裏がイスに付かないように片足を上げる
  4. 息を吸ってお腹を膨らませ、息を吐きながら膝下だけを動かして足をさらに上げる
  5. 左右の足で2回ずつ繰り返す

6-2. 少しの空きスペースでできるエクササイズやストレッチ

オフィスのちょっとした空きスペースを使ってできるエクササイズやストレッチを紹介します。

6-2-1. 上半身の運動

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上半身を伸ばす全身伸びの方法は、以下の通りです。

  1. 立ち上がった状態で手を組み、上方向に伸ばす
  2. 1の状態を10〜30秒ほどキープする

6-2-2. 肩〜肩甲骨の運動

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肩回しのやり方は以下の通りです。

  1. 両手を肩に添える
  2. 息を吸いながら、肘で大きな丸を描く感じで回後ろ方向に大きく回す
  3. 息を吐きながら、前方向に回す
  4. 逆の回転(息を吸いながら前方向に回し、息を吐きながら後方向に回す)も同様に行う
  5. ゆっくり前後に8回ずつ繰り返す

姿勢が前かがみにならないように気をつけて行いましょう。

6-2-3. 下半身の運動

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足のむくみを取る下半身のストレッチです。

  1. 右足を後ろに大きく引く
  2. 左足の膝に手を置いて体重をかけ、10〜30秒キープします
  3. 反対も同様に行います

足が伸びているかを意識しながら行いましょう。

座りすぎ対策で、心身共に健康に仕事環境を整えよう!

座りすぎ問題は働く人だけでなく、日本全体における社会課題へと発展しています。座位時間が長いと腰痛や肩こり、肥満、メンタルヘルスの不調や疾患などの健康リスクの増大や企業における生産性やワーク・エンゲイジメントの低下、経済損失にもつながる可能性があります。

このようなリスクを減らすために座りすぎ対策が有効です。例としてスタンディングエリアや運動機会、コーヒーブレイクという行動を導入する方法などもご紹介しました。ぜひ座りすぎ対策にコーヒーブレイクという小休憩の機会などを活用して、健康かつ快適に働ける職場を目指しましょう。