サステナビリティの実現に向けた企業の取り組みとは?消費者が商品を選ぶ際の基準も紹介
記事カテゴリ:[ サステナビリティとは? ]
更新日:2025/1/31
「サステナビリティ=持続可能性」とは、環境や経済、社会に配慮した活動を行い、さまざまな観点から、現在享受している価値を将来にわたって持続させようとする考え方のことです。この考え方からサステナブルな社会を目指した商品も数多く登場しています。
サステナブルな社会を目指した商品とは、環境と社会、経済の3つの側面で持続可能な状態を目指すために配慮された商品のことをいいます。近年は専門店でなくともこのような商品を扱う店が増え、よく見かけるようになりました。
この記事では、サステナブルな社会を目指した商品の特徴や重要性を解説し、具体的な例を紹介します。商品を選ぶ基準も紹介しているので、サステナブルな社会を実現するためにはどのような商品を買ったらいいのか迷った時の参考にしてください。
サステナブルな社会を目指した商品とは
サステナビリティ(Sustainability)は「sustain(維持する)」と「ability(~する能力)」を組み合わせた造語です。日本語では「持続可能性」と訳されています。
それではサステナブルな社会を目指した商品とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか?ここからは商品の特徴とその重要性、そして具体的な例を解説します。
1-1 サステナブルな社会を目指した商品の特徴
サステナブルな社会を目指した商品とは、環境と社会、経済が持続的に発展できるよう、さまざまな過程で配慮されている商品のことです。単純に環境への負荷が少ない商品のことだけを指すわけではありません。
商品が消費者の手に渡って使われるまでの間には、原材料や資材の調達、商品の生産、流通、販売という過程があります。これらの過程に加えて、使用後の廃棄という点でも持続可能性が考慮されているのが特徴です。
商品を世に送り出す企業は、商品をつくって売ったら終わりではありません。長く使い続けられる商品はもちろん、使い終わった商品を回収して新たなものを生み出すような仕組みづくりも強く求められています。環境省の調査によると、特に衣服においては商品のトレーサビリティの確保や、国際認証の取得が持続可能性を示す重要な要素として位置付けられています。
1-2 サステナブルな社会を目指した商品の重要性
私たちの日常生活は食品や衣類などのさまざまな商品に支えられています。その商品の製造に必要なのが膨大な資源です。しかし、地球上の資源は無限ではありません。無計画に使い続けるといずれは枯渇してしまう可能性があります。
さらに、商品の製造は、多くの人々の労働力によって支えられています。しかし、不当な給与や危険な労働環境など、労働者の権利が十分に守られていない場合もあります。サステナブルな社会を目指すには、このような側面にも目を向けなければなりません。
こうした環境と社会の課題に対応するためサステナビリティが重視されるようになり、企業のさまざまな取り組みから生まれた商品が登場しました。このような商品は、現在の私たちの生活を維持しつつ将来の資源と環境を守り、より公平でサステナブルな社会を実現する一助となると考えられています。
1-3 サステナブルな社会を目指した商品の具体例
サステナブルな社会を目指した商品というと、どのような商品を思い浮かべますか?ここで具体例を見てみましょう。
1-3-1 リサイクル素材を使用した商品
近年、リサイクル素材を使用した商品が増加しています。使用済みの商品を回収し新たに製造した商品や、廃棄される素材を使ってつくられた商品が該当します。再生資源の有効活用になるだけでなく、製造過程のエネルギーの使用量や二酸化炭素(以下、CO₂)排出量の抑制にもつながっています。
1-3-2 消費電力が少ない製品
高効率のエアコンやLED照明などの消費電力が少ない製品もサステナブルな社会を目指した商品の一例です。使用時のエネルギー消費を大幅に削減し、CO₂排出量を抑える効果があります。
1-3-3 有機栽培された農作物
食品分野を見てみましょう。例えば、有機栽培された野菜や果物などの農作物もサステナブルな社会を目指した商品の一部です。有機農産物は化学物質の使用を制限し、環境保護や生物多様性、天然資源の維持に貢献する農業生産方法の一つとなっています。
1-3-4 売り上げの一部が寄付される商品
消費者が購入することで、売り上げの一部が社会貢献活動や慈善団体に寄付される商品もあります。消費者は商品を購入するだけで、寄付活動へ参加が可能です。継続的な支援や資金調達が可能になり、より良い社会の実現につながります。
サステナブルな社会を目指した商品が消費者に注目される理由
サステナブルな社会を目指した商品は単なる流行ではなく、消費者の生活や価値観の一部となりつつあります。これらの商品が消費者に注目される3つの理由を解説します。
2-1 環境に配慮しているため
気候変動や環境汚染、生物多様性の喪失といった環境問題は年々深刻化しています。そのような中で環境問題へ関心を持つ消費者は増えてきました。
環境問題への意識が高い人々が買い物をする際、サステナブルな社会を目指した商品は重要な選択肢の一つとなっています。このような商品を選択することが食品ロスや産業廃棄物の削減、ひいては地球環境の改善につながると期待されています。
2-2 公平な社会の実現につながるため
社会的に持続可能な方法で生産されるということも、注目される理由の一つです。社会的に持続可能な生産方法には、労働者の権利や福祉を守る活動や公正な取引などの取り組みが含まれています。
例えば、環境への負荷が少なく、持続可能な農法を普及させるために教育の機会を設けたり、労働条件の改善に取り組んだりするのもその一例です。このような取り組みを通して生産者は安定した収入を得られ、生活の質を向上させられます。
原材料の調達過程や製造過程を可視化して開示する取り組みも重要です。公正な取引の促進にもつながるため、結果的に公平な社会の実現の一助となります。
ネスレが行う責任あるカカオのサプライチェーンの構築に関する取り組みは、下記のリンクからご覧いただけます。
2-3 企業の取り組みによって身近になったため
サステナビリティに関する取り組みが企業価値の向上につながるという認識が広まるにつれ、多くの企業が関連する商品の開発に乗り出すようになりました。その結果、食品、アパレル、家電などさまざまな業界でサステナブルな社会を目指した商品が増加し、消費者の目に触れる機会が増えています。
種類だけでなく価格帯も幅広くなり、個人の価値観やライフスタイルに合わせて環境や社会に配慮した商品を選べるようになってきました。このようにサステナブルな社会を目指した商品は消費者にとって身近な存在となっており、これも人々の注目を集める要因の一つとなっています。
サステナブルな社会を目指した商品を選ぶ基準
買い物をするならサステナブルな社会を目指した商品を選びたいと思うこともあるでしょう。では、どのような基準で商品を選べば良いのでしょうか?
商品選びの時にチェックするポイントや調べておきたいことなど、選ぶ基準を解説します。
3-1 認証ラベル・マークがあること
実際には環境対策につながらない商品をサステナブルな社会を目指した商品として宣伝・販売しているケースも見受けられます。このようなケースは「グリーンウォッシュ」と呼ばれ、消費者に誤解を招くとして問題となっています。
そこで、サステナブルな社会を目指した商品を探す際にチェックしたいポイントの一つが認証ラベルや認証マークです。認証を受けた商品は、信頼できる第三者機関によって特定の基準や要件を満たしていることが証明されています。
ただし、認証されていないとサステナブルな社会を目指した商品とはいえない、ということではありません。指標の一つとして覚えておきましょう。
代表的な認証ラベル・認証マークには以下のようなものがあります。
- FSC認証:持続可能な方法で管理された森林から生産された木材製品であることを示す認証
- レインフォレスト・アライアンス認証:持続可能な農業と森林保全を実践する農園や製品に与えられる認証
参考:FSC認証について | Forest Stewardship Council
参考:「レインフォレスト・アライアンス認証」とは何か?|Rainforest Alliance
3-2 サステナブルな社会を目指した素材を使用していること
商品を選ぶ際は素材にも注目してみましょう。
サステナブルな社会を目指した素材とは、環境問題はもちろん、社会にも配慮して生産された素材のことです。
サステナブルな社会を目指した素材の例
- 天然素材:オーガニックコットンやリネンなど、化学薬品を使わずに栽培された植物由来の素材
- バイオマス素材:とうもろこしやサトウキビなど再生可能な素材を原料とする素材
- リサイクル素材:廃棄物を再利用した素材
- アニマルフリー素材:動物由来の素材を使っていない素材や、動物実験を行わずにつくられた素材
参考:天然繊維における環境配慮等の取組 について|経済産業省
参考:バイオプラスチック導入目標集|環境省
参考:繊維製品の環境配慮設計に関する事例集|経済産業省
3-3 地産地消を意識していること
地産地消につながる商品もサステナブルな社会を目指した商品の一部です。
地産地消とは、地域で生産された食材をその地域で消費するという考え方や取り組みのことです。農林水産物の生産者と消費者との結びつきを強めたり、地域経済の活性化に繋げたりする目的で推進されるようになりました。
地元でつくられた食べ物は、輸入や輸送が必要な食品よりもエネルギーの消費量やCO₂排出量が少ないという特徴があります。時間がかかる長距離の輸送が必要ないため、食品の劣化を防ぎやすく、フードロス(※)削減の一環になるという側面もあります。
※まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。
3-4 「3R」を実現しやすい製品であること
廃棄物を減らし、資源の効率的な利用を促進する「3R」というアプローチをご存知でしょうか?
3Rとは、「Reduce(リデュース)=ごみそのものを減らす」、「Reuse(リユース)=何度も繰り返し使う」、「Recycle(リサイクル)=資源として再活用するという」の頭文字をとった3つの行動の総称です。
例えば、リサイクルが可能な商品は、使った後にその商品が新たな生産資源となります。リペア(修理)ができる商品は、使い捨て商品と異なり長く使い続けられるので、壊れても新しく買い替える必要はありません。
このような3Rやを実現しやすい商品が広まれば、新たな商品をつくるための原材料の使用量や、廃棄物の量を減らせるようになるでしょう。
3-5 トレーサビリティが高いこと
サステナブルな社会を目指した商品を選択するには、トレーサビリティも指標の一つとなります。トレーサビリティとは、商品の生産から流通、消費に至るまでの過程を追跡し、その履歴情報を誰でも確認・追跡できるようにする仕組みのことです。
トレーサビリティが確保されると、原材料の調達ルートや製造のプロセスが明確になり、商品の流通経路を把握できるようになります。その結果、商品がどのように生産されたか、原材料がどこから来たかなどが分かり、サステナブルな社会を目指した商品かどうかを判断しやすくなるのです。
トレーサビリティが確保された商品からは、環境や社会、経済に対する影響を包括的に評価でき、持続可能な消費を実現する一助となります。
サステナブルな社会を目指した取り組み
食品飲料メーカーであるネスレはサステナブルな社会の実現に向け、製品の開発や流通を含めたさまざまな取り組みを続けています。ここからは、ネスレ日本の取り組みを紹介します。
4-1 「キットカット」大袋タイプの外袋を紙製に変更
「キットカット」は世界80ヶ国以上で広く販売されている人気の製品ですが、その中でもトップクラスの売り上げを誇っているのが日本市場。
そんなネスレ日本が2019年から始めた「キットカット」大袋製品の外袋素材をプラスチックから紙に変更する取り組みは、2020年にはほぼすべての「キットカット」大袋製品へと拡大し、プラスチックを削減してきました。
ネスレ日本では今後、食品を製造・販売する責任ある企業として「キットカット」全製品の包装材料をリサイクル・リユース可能な素材にすることも目指しており、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて取り組みを推進しています。
4-2 「モンプチ クリスピーキッス」大袋製品の外袋を紙パッケージに変更
ネスレ日本にはペットの健康・栄養、人とペットの共生、さらには持続可能な未来のためにさまざまな取り組みを行っているネスレ ピュリナ ペットケア(以下、ネスレ ピュリナ)があります。
このネスレ ピュリナでは、2022年3月から、主力製品のねこ用おやつ「モンプチ クリスピーキッス」大袋製品24品目の外袋をプラスチックから紙パッケージに順次変更しています。
この紙パッケージは、雑がみ類として古紙回収に回してリサイクルすることが可能な素材です。
紙パッケージへの変更について、詳しくは下記にまとめていますので、ぜひご覧ください。
4-3 「ネスカフェ エクセラ ボトルコーヒー」のラベルレス製品を発売
近年、「ごみを減らせる」「ラベルをはがす手間を削減できる」と、消費者の支持が広がっているラベルレス(製品名などが印刷されたラベルが貼られていない)製品。
そんな「ラベルレス製品」として、ネスレ日本では2022年3月に、ペットボトル入り液体コーヒー「ネスカフェ エクセラ ボトルコーヒー」の2製品(甘さひかえめ・無糖)のラベルレスタイプを発売しました。
原材料名などの法定表示は外装箱に記載し、リサイクルマークはペットボトルにエンボス加工を施すことでラベルレス化を実現しています。
種類(甘さひかえめ、無糖)の識別は、目につきやすいキャップの表記で行い、取り出し簡単で再封機能付きの専用外箱を使用するなど、消費者のユーザビリティにも配慮した製品となっています。
「ネスカフェ エクセラ ボトルコーヒーのラベルレス製品を販売」についての詳しい記事は以下からご覧いただけます。
4-4 「ネスプレッソ」の使用済みカプセルを店舗で回収
カプセルコーヒーと専用のコーヒーメーカーによる上質なコーヒー体験を提供するネスプレッソは、2020年から独自プログラム「ネスプレッソ リサイクルプログラム」を日本でも始めています。
このプログラムでは、「ネスプレッソ」の使用済みカプセルを店舗などで回収、リサイクル施設で包材原料に使われているアルミニウムとコーヒーかすに分別します。
分別後のアルミニウムは再生アルミニウムとして、多様な製品の原材料として再利用されます。コーヒーかすは、草木や刈り芝などからつくられたチ ップと混ぜ合わせ、ゆっくりと醗酵・熟成させることで植物性堆肥が生み出されます。植物性堆肥へと姿を変えたコーヒー かすはそのままでも植物の成長に役立ちますが、より幅広く活用いただくために様々な素材と混ぜ合わせ培養土として、植栽の管理や野菜の栽培など様々な用途にお使いいただけます。
4-5 「ネスカフェ ゴールドブレンド エコ&システムパック」の製品パッケージの改善
ネスレは、製品パッケージの改善を実施しています。その代表例が「ネスカフェ エコ&システムパック」の採用です。
「ネスカフェ エコ&システムパック」は、ネスレが提供する詰め替え用のコーヒー製品です。2008年の発売以来、プラスチックキャップの削減、アルミ箔使用量のゼロ化、プラスチックフィルムの削減を経て、今のパッケージデザインになりました。
製品パッケージの改善に関する取り組みは、下記のリンクからご覧いただけます。
4-6 栄養補助飲料の付属ストローを紙製に変更
「栄養を通じて、より健康な生活を支援する」ことをパーパスに掲げる、ネスレ日本のヘルスケア特化カンパニー、ネスレ ヘルスサイエンス。
ネスレ日本では2021年1月から、同カンパニーが手掛ける「アイソカル100」をはじめとする栄養補助飲料12品目の付属ストローを、従来のプラスチック製から紙製に変更しました。
栄養補助飲料に紙ストローの取り組みについての詳細は、下記のリンクからご覧いただけます。
サステナブルな社会を目指した商品を取り入れてみよう!
サステナブルな社会を目指した商品は、環境や社会に配慮した選択肢として多くの消費者に受け入れられています。日常生活の中に少しずつこのような商品を取り入れることにより、私たち一人ひとりが環境保護や社会的責任を意識するきっかけへとつながっていくでしょう。
一人の小さな選択はやがて大きな変化を生み出す可能性もあります。サステナブルな社会を目指した商品を積極的に取り入れるという選択肢も含め、私たちにできることから始めてみませんか?