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「ネスレ サステナビリティ プログラム」をご活用の先生インタビュー その3

「生徒の変化」が教員の意識、地域との関係性を変えた
ープログラムをきっかけに教室の中と社会がつながったー

学校名佐賀県立佐賀東高等学校(佐賀県)
先生名石橋 俊 先生(英語科)
対象学年高校2年生
実施時期2023年6月
授業構成2コマ構成 総合的な探究の時間
授業展開探究の時間に、1コマ目に映像授業、2コマにグループワークを発表

佐賀東高校では、地域課題に対し、①問題発見 ➁原因分析 ③解決策の実行 の3ステップを探究活動で取り組みたいとの思いで、6月に「ネスレ サステナビリティ プログラム」を活用した授業を高校2年生に実施しました。映像授業で紙パッケージに興味を持った生徒が、その日の学校帰りに『キットカット』を実際に手に取ってみて、翌日の教室では紙パッケージが話題となりました。スモールステップを自然に踏み出したことで、その後、生徒がプラスチックごみ問題への関心を高め、地域貢献を始めるなど、大きな変化につながりました。

しっかりと探究学習に取り組みたい
絶妙なタイミングで見つけた「ネスレ サステナビリティ プログラム」

入学する生徒が定員に満たない年もあり、学校活動を通して、働く意義、学ぶ意義、社会に出ていくとは何か、を知ってほしいと思っていました。
以前までの探究学習では、問題発見やあたりさわりのない解決策もしくは実現不可能な解決案の提案で終始することが多かったので、新しい探究教材を探していました。何か変えたい、でも時間的な余裕はない、今この瞬間に劇的に何か変えるにはどうしたらよいのか、と悩んでいました。
そんな時に、誰もが知っている企業の、国内外の取り組みを紹介した映像・ワークシート・学習指導案までそろっている教材を見つけました。振り返ってみても、私たちにとって絶妙なタイミングで提供いただき、本当に助かりました。

年間の探究学習の流れは、プログラム2コマを踏まえて、「あなたがた高校生としては何ができるのか」を考えさせることにしました。
映像教材では「企業がどんな問題に対して、どう向き合い、どう行動したか」が紹介されています。ネスレのグローバルな事例を見て、彼らは地元に目を向けて、地元の問題解決策を考えました。最終的には、実際に行動し解決策がうまくいったのか、問題点はなかったのかを振り返るモデルとしても使わせていただきました。

知らなかったことを知った喜びや現実に起こっている問題に憤りを感じる

教員はもちろん「ネスレ」という社名を知っていましたが、生徒たちは「キットカット」の映像が出たところで、製品と社名が繋がりました。身近な会社の取り組みに関心を持ったようで、社会的な課題や国際的な問題を知らない生徒も映像に引き込まれていきました。映像の新しいこと、例えば、コーヒーを日本で作っていることに興奮したり、コーヒー豆の生産者の苦しい生活に「いやいや、なしやろ」といった憤りも感じてくれました。知識を得る喜びや現実に対して怒りを覚えてくれたことを目の当たりにしたことは、教師としてうれしかったですね。

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プログラムを受けた日、一部の生徒が実際の「キットカット」のパッケージを手に取り、翌日学校に持ってきました。授業の内容をきっかけに生徒たちが行動したことは、生徒たちにとっては何気ないことでしたが、そんな一歩を生徒が踏み出したことは、教員として一つの面白味だったなと思いました。
また外袋を手にとりながら、知識ではなく手触り肌触りで実感したのが面白かったようです。実体験に勝るものはありませんね。あらためて会話が生まれるというのもいいことですし、図らずもプログラムの振り返りにもなりました。

生徒の行動が地域との関係性を変えていく

プログラム2コマの後は、時間をかけて地域の課題について考えました。何が課題で、原因は何で、それを解決するために何をするか。ワークシートを使ってもう1回流れを整理しました。

ごみ問題に対して、ダンボールの再利用やリユースの発想が根付き始めました。文化祭では、地域の呉服屋さんから譲り受けてダンスの衣装を作りました。また、こだわりのある食生活の提案をした生徒は、自らグルテンフリーの食生活の実践を紹介しました。
さらにネスレのコーヒー農家さんへの支援を参考にして、地域で困っている人のことを考えて、こども食堂のお手伝いに行ったり、塾に通っていない小学生を学校に呼んで宿題を見てあげたり、という取り組みを行いました。そうしたら、それを受けた小学生が「高校生と一緒に勉強して楽しかった」という投稿をしてくれて、地方新聞に載りました。

最近は、地域とのつながりや新聞記事などによって、地域からの目が変わってきたのを感じます。学習に向かう動機付けが高くない生徒達も、積極的に学習に取り組むようになり、地域に根ざして変わっていく生徒たちの変化を周囲も感じてくれています。地方新聞に記事が載ったことで、卒業生から「面白い活動をしているね」「変わってきたね」「落ち着いてきてるね」とお話をいただいたときは、本当にうれしかったですね。

「実は、やれる子たちかもしれない」
生徒の変化が諦めかけていた教員の気持ちを変える

20分程度の映像ですが、生徒たちは、全く知らなかったことを知るという経験を重ね、興奮気味の表情をしていました。それをみて教員も「こんな顔をするんだ」と新しい発見をしました。その後も、「思ったより(プログラムが)体に入っている」「思ったより、あの子たちが動いてくれたね」という話をしました。
学習に対して苦手意識のある生徒も多いので、どこまで伝えられるか不安な部分も正直あったんですよね。授業を通して生徒たちの中に何か残ってほしいという想いもあったので、ここまで彼らが変わったことにおそらく教員が一番驚いたんです。例えば、「あの店は紙ストローだった」という一言は、彼らにとってはやはり何気ないことなんですけど、私たちにとってはまぎれもなく“彼らが変わった瞬間”に居合わせているんです。
生徒が変わってきて、「実はやれる子たちかもしれない」と教員たちが思い始めました。少し諦めのような気持ちを持っていたことを反省しました。

今までと視点が変われば、確実に生き方が変わる

その後も日常の中で、「フェアトレード商品を買ったよ」、「あれはまだプラスチックや」「あそこの店はストローが紙製だった」と教員に伝えてくれます。今までは当たり前だったプラスチックパッケージに何らかの引っかかりを覚えたり、製品の裏側に存在する人々に思いをはせたり、映像のことを無意識に記憶していて、ふとした瞬間に思い出してくれている生徒がいます。

日々の気づきが増えたということですが、私たちは、そこが一番大事かなと思っています。今までの生き方から視点がちょっと変わったっていうのは、彼らの生き方が確実に変わる証拠なんですよね。

プログラムをきっかけに教室の中と学校の外の世界がつながる
探究活動のやり方が変わりレベルがあがった

まず間違いなく探究活動自体のレベルが上がりました。ネスレのように事業活動を教材として紹介している企業は少ないんです。実際に今起こっている社会課題や、企業の取り組みを勉強し、それを学校以外のニュースや新聞でも目にする。これこそ教室の中と学校外の世界がつながった瞬間なんです。

今回、プログラムで生徒たちがネスレの事例を知り、心を動かされました。それがきっかけでスモールステップから、探究活動として地域課題の改善に向き合い、いい形で地域と繋がることができました。
実際に企業に行ってみたいとか、話を聞いてみたいなどと生徒からの多くの要望が上がるようになりました。そうなると教員は、実際に企業と連携したり、あるいはその生徒が提案したものを実行に移すために力を尽くしたりすることができます。本校の探究学習については冗談抜きでガラッとやり方が変わりました。

来年度も、地域の問題解決として問題を発見し、原因を分析し解決策に取り組むというこの三つのステップを考えるにあたって、まず企業側がどう捉えているかの1例として、プログラムを取り上げる方向で進めています。