持続可能なコーヒー
コーヒーは、世界で最も取引される農産物の一つであり、多くの国にとって重要な輸出作物です。世界中の生産者から調達されたコーヒー豆は、「ネスカフェ」や「ネスプレッソ」までネスレの最も象徴的なブランドに使用されており、日々何百万人もの消費者のお客さまに喜びをもたらしています。
ネスレは、コーヒーの大部分を小規模生産者から調達しており、ネスレのグローバルサプライチェーンにおいて小規模生産者は重要な役割を果たしています。サプライチェーンは30カ国以上にまたがっており、それぞれの地域に固有の状況やリスクが存在します。
コーヒーの需要は世界的に増加し続けていますが、限られた耕作地をめぐって他の作物とコーヒーが競い合っています。このため世界のコーヒー栽培地域で、生産者は収益性、人権リスク、気候変動の影響などの大きな課題に直面しています。
だからこそネスレは、コーヒー生豆のサプライチェーンを継続的に改善し、すべての‘一杯’をさらに持続可能なものにするために取り組んでいます。
さらに持続可能なコーヒー生産に向けたネスレの進捗
「ネスカフェ」「ネスプレッソ」のプログラムを通じたコーヒー供給向上への取り組み
10年以上前、ネスレは「ネスカフェ プラン」という世界的なコーヒーのサステナビリティ イニシアチブを開始しました。そしてネスレは、今後10年間を見据えたサステナビリティの長期的な目標を明らかにしました。「ネスカフェ プラン2030」を通して、自社の伝統、規模、リーチを活かし、from farm to cup(農園からカップまで)で生活や生計を向上させる支援を行い、コーヒーセクターのより包括的で持続可能な未来を支援する活動を加速します。この「プラン」の中核を成すのが再生農業です。ネスレは生産者と協力して、再生農法を生産者が採用するように支援します。再生農法は、二酸化炭素排出量の削減や、生産者の所得向上のために農園の生産性向上を支援します。
また、生産者のために各種研修を支援・実施して、生産者の経済的なレジリエンス(困難に負けない力)を支え、ベストプラクティスに関する知見を体系構築しています。
ジェンダー格差といった現地の人権問題への対処など、さまざまなテーマを扱います。
ネスレは、ICO(国際コーヒー機関)の官民タスクフォースや、グローバル・コーヒー・プラットフォームおよびサステナブル・コーヒー・チャレンジ(いずれも英文サイトへのリンク)といった複数のステークホルダーによるセクター全体での取り組みを通じて、共同の基礎段階の活動に取り組んでいます。
さらに、「ネスプレッソ」は約20年にわたって「ネスプレッソAAA サステイナブル・クオリティ(持続可能品質)™ プログラム」(英文サイトへリンク)を通じて、生産者が持続可能な生活を築くことができるように支援しています。
レインフォレスト・アライアンスとともに2003年に開始したこのプログラムは、「ネスプレッソ」が最高品質のコーヒーを提供するとともに、生産者およびそのコミュニティの持続可能な生活を実現し、また環境保護に取り組むものです。
在来種の樹木を植樹することは、土壌浸食の軽減、水の供給、気温の調節など、多くの重要な恩恵をもたらすのに役立ちます。そのため、コーヒー生産者が気候変動に適応できるよう支援することは、「ネスプレッソ」の戦略の重要な一翼を担っているのです。
コーヒーの供給における透明性の確保
ネスレは2025年までに、コーヒーの100%を持続可能な方法で生産することをコミットしています。
ネスレは、コーヒーのトレーサビリティに常に焦点を当てています。コーヒー豆の産地を把握することは、調達するサプライヤーや生産者を評価するために不可欠であり、また、サプライヤーや生産者が持続可能なサプライチェーンの一翼となるため、慣行を改善する力をつけるためにも必要です。
「ネスプレッソ」は定期的に「Positive Cup Impact Assessment Report」を発行しています。この報告書は、「ネスプレッソ」がラテンアメリカで行っているさらに持続可能なコーヒー調達のための取り組みや、責任ある調達に向けた「ネスプレッソAAA サステイナブル・クオリティ(持続可能品質)™ プログラム」の影響について詳述しています。
教育や高収量の苗木を通じて生産者の成長を支援
ネスレは、人と自然の調和が必要だと考えています。そのため、世界中の農学者の専門知識を活用して、コーヒー生産者が生産的かつ持続可能な収穫を実現できるように支援しています。
ネスレは、10年以上にわたって、協力関係にある生産者向けに優れた農法に関する農業研修を支援しています。ここで学んだ知識をもとに、生産者は農園の効率や品質を向上させ、作物を多様化することができます。これは、例えばより効率的な灌漑方法を通じて、経済的リスクの軽減、生物多様性の向上や環境負荷の低減に役立ちます。
またネスレは、優れたコーヒー苗木を生産者に配布することで、コーヒー作物の再生を支援しています。ブラジル、コロンビア、コートジボワール、ケニア、メキシコ、フィリピン、ベトナムなど、世界各地のコーヒー生産者と密接に連携しています。ネスレは2010年以降、少なくとも2億5,000万本の高収量かつ病気に強いコーヒー苗木を生産者に配布し、全世界の約12万5,000ヘクタールのコーヒー農園の再生に貢献しました。
新たな優れたコーヒー品種を開発することも、ネスレの取り組みにおいて大きな部分を占めています。生産性、回復力や品質の向上を支援するために、ネスレの研究育種プログラムは、メキシコ、コロンビア、エクアドル、フィリピン、タイで15種類の新しい優れたアラビカ/ロブスタコーヒー種を開発してリリースしました。
環境保護を支援
人権を保護する、労働者や若年層の生活をまもる
ネスレは、自社のコーヒーサプライチェーンから、強制労働や児童労働リスク、その他あらゆる形態の労働権の侵害などの人権侵害を撲滅することをコミットしています。ネスレは、生産者からコミュニティに至るまでコーヒー豆を支える人々を保護し、その社会的地位を向上させるため、ベストプラクティスを推進し、定着させるように取り組んでいます。
コーヒーサプライチェーンは複雑なグローバルネットワークであり、複数の国のサプライヤーとともに、さまざまな規制や基準を守り、遵守する必要があります。ネスレは、特定されたホットスポットに焦点を当てながら、すべてのコーヒー産地において、労働者の権利遵守の確保に継続的に取り組んでいます。
例えば、検証済み、あるいは認証済みのプログラムのデューデリジェンスに加えて、現在はメキシコとフィリピンで集中的なモニタリング、関与、是正プログラムを実施しています。新型コロナウイルスの感染拡大によりいくつかの課題が生じましたが、ネスレはこれらのプログラムを継続しており、メキシコではCertificadora de Productos Sosteniblesと、フィリピンではMaquindanaon Development Foundation Inc.(MDFI)と協働しています。
東アフリカにおける女性の権利向上
ネスレが関わっている生産者の多くは女性です。女性の生産者が土地、信用、情報にアクセスしやすくなるよう働きかけ続けることが重要です。ネスレはこの支援に取り組んでいます。
ネスレは、ジェンダーバイアスに取り組むことから始めます。ネスレは、農業をより多様性のある公平なものにするために、農業パートナーや農学者の研修にもコミットしています。ネスレは過去8年間、東アフリカの1万5,000人以上の女性を対象に、優れた農法、金融リテラシー、リーダーシップに関する知識を提供しました。剪定や除草からマルチングや収穫に至るまで、より良い農法を学び、自分たちの作物を適切に商品化する方法についても学んでいます。
新しいスキルを身につけた女性たちは、収入を向上させることができます。より大きく経済的に自立することは、女性たち自身の社会的地位の向上だけでなく、女性や少女たちの将来の道を切り開くことにもつながります。
若年層が農業で生計を立てることを可能に
ネスレは既存の生産者を支援するだけでなく、未来の世代についても熱心に取り組んでいます。ネスレは、2030年までに全世界で1,000万人の若年層が経済的な機会を得られるよう支援することをコミットしています。コミットメントの一環として、ホンジュラスでNESCAFÉ Youthを設立、また現地政府と共同してCoffee Quality Competence Centerを立ち上げました。
この取り組みは、若年層にコーヒー生産、優れた農法やコーヒーの品質についてより深く学ぶ場を提供します。また、デジタルスキル、ビジネス感覚や自信を身につけることで、より良い雇用機会や起業につなげることができます。この取り組みを通じて、2025年までにホンジュラスで最大2万5,000人の若年層の育成をコミットしており、またメキシコ、コロンビア、ブラジルでも若年層向け研修を拡大しています。
これらの活動はすべて、ネスレの環境再生の取り組みを支援するものです。若年層の人たちと関わることで、その創造性やイノベーションを引き出したいと考えています。さらに持続可能なコーヒー栽培モデルを構築、コーヒー生産を向上、またコーヒーコミュニティの次世代リーダー育成を支援するツールをネスレは提供しています。
コーヒー価格低迷への対応
コーヒーの世界市場価格は、ブラジルの悪天候やその他の要因を受けて、2021年に大幅に上昇、ここ数年における最高値となりました。2021年は年間を通して、新型コロナウイルスの感染拡大がコーヒー生産者や労働者、物流や輸送に大きな影響を与え続けました。この収穫期は、コーヒー生産者は収入水準が上がりますが、「ネスカフェ」、「ネスプレッソ」は、コーヒー生産者や労働者を支援するプログラムや取り組みを維持、改善する決意を固めています。
ブランドによるイニシアチブに加えて、2021年、ネスレは引き続きICO(国際コーヒー機関)のタスクフォースがコーヒー生産者の収入レベルの所得適正化に向けて対処するためにさらなる認知向上やツール開発を支援しました。このように、ネスレは業界内で積極的な活動を継続し、大規模な変化をもたらすパートナーシップを育んでいます。