循環型社会とSDGsとの関係とは?持続可能な社会との違いや私たちにできることを紹介
記事カテゴリ:[ 循環型社会 ]
更新日:2025/1/31
近年、「循環型社会」という言葉を目にする機会が増えたと感じる方は多いでしょう。その一方で、循環型社会とはどういった社会なのか、持続可能な社会やSDGsとの違いはどこにあるのかなど、見分けにくさを覚えている方もいるのではないでしょうか。
そこで、循環型社会とはなにかをここでひも解きながら、SDGsとの関係性や、循環型社会に向けて私たちができることなどについて詳しくご紹介していきます。
循環型社会とは?
「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」が特徴とされる現代の経済社会。このような経済社会の在り方は、天然資源の枯渇や気候変動を引き起こすだけでなく、大量資源採取による生態系の破壊が指摘されています。
「循環型社会」とは、石油をはじめとする天然資源を無駄なく使うことで廃棄物を減らし、従来ゴミとしていたものを資源として繰り返し使う、環境に配慮した社会のことです。
循環型社会と似た言葉に「循環経済(サーキュラーエコノミー)」があります。これは、再生可能な原材料を積極的に利用し、商品の回収やリサイクル、再販売や共有などによって環境への負荷を抑え、その過程で経済的な成長をも実現する経済の在り方です。
循環型社会と循環経済には視点や重点の置き方の違いがありますが、どちらも「持続可能な社会の実現」という基本目標に合致する概念といえます。
循環型社会の実現に欠かせない3Rとは
循環型社会の実現に「3R」が欠かせないといわれています。3Rとは、「Reduce(リデュース)=ごみそのものを減らす」、「Reuse(リユース)=何度も繰り返し使う」、「Recycle(リサイクル)=資源として再活用するという」の頭文字をとった3つの行動の総称です。
2004年6月の主要国首脳会議(G8サミット)で、当時の小泉純一郎首相が3Rの国際会議(3Rイニシアティブ閣僚会合)を提唱しました。3Rを通じて循環型社会の構築を推進しようとする気運が高まったことで浸透し、今日に至っています。
2-1 Reduce(リデュース):廃棄物の発生を抑制
Reduceは英語で「減らす」という意味です。廃棄物の発生を少なくしたり、商品製造 の際に使う資源の量を抑えたりすることを指し、次のような取り組みが該当します。
【消費者の取り組み例】
- 買い物にエコバッグを利用し、レジ袋はもらわない
- 詰め替え容器入りや簡易包装の商品を買う
- 頻繁に使わないものはレンタル・シェアリングサービスを活用する
【生産者の取り組み例】
- 食品ロスの削減に取り組む
- 詰め替え容器や簡易包装の普及をすすめる
- 耐久性、修理性などを工夫しながら商品設計を行い、製造時は原材料の無駄使いを防ぐ
2-2 Reuse(リユース):繰り返して使う
Reuseとは、一度使った物やその部品などを繰り返し使用したり、それが可能となるような製品の製造および技術の開発などを行うことです。
【消費者の取り組み例】
- 利用後に返却・回収に回し、牛乳びんのように 洗浄してから再度使える「リターナブル容器」 の商品を選ぶ
- 不用品をフリーマーケットに出品する
【生産者の取り組み例】
- 本体あるいは部品の再使用がしやすい商品設計をする
- 回収した使用済み商品の全体または一部を再生、活用して新品同様の物を再び作り出す
- 使い終わった商品の本体、部品、容器などを回収して再度利用する
2-3 Recycle(リサイクル):資源として再利用
Recycleとは廃棄物などを材料やエネルギー源として再活用することです。それに向けた商品設計や使用済み商品の回収の他、リサイクル関連の技術や装置の開発なども含みます。
【消費者の取り組み例】
- 資源ごみの分別回収に参加したり、効率的な分別回収に協力する
- リサイクルによってつくられた商品をできるだけ利用する
【生産者の取り組み例】
- リサイクルされた原材料で商品をつくる
- リサイクルしやすい商品の設計や製造を行う
- 自社製の使用済み商品の回収やリサイクルを行う
- 副産物や使用済み商品のリサイクルの効率化に努める
循環型社会はなぜ必要?
環境省は、循環型社会とは「大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会に代わるものとして提示された概念」とし、その実現に向けて「循環型社会形成推進基本法を2000年に公布・施行しました。「循環型社会形成推進基本法」では先に述べた“3R”の推進を求めています。
そもそもなぜ国を挙げて循環型社会の実現を目指すのでしょうか。これまでの資源を大量に使い利便性のみを追求したライフスタイルが引き起こしたさまざまな課題に目を向けると、それを理解できるでしょう。
3-1 廃棄物量の増加
古来より人類は、自然がもたらす恵みを食料や道具として利用し、不要になるとごみとして廃棄してきました。ただ、産業革命後、特に20世紀は大量の資源の採取や生産、流通が可能になり、「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」の経済活動システムが構築されています。
暮らしの利便性の高まりにより世界人口も増加し、21世紀に入ると、「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」の経済活動システムは先進国のみならず発展途上地域にも及ぶようになりました。環境省の資料によると、2010年に約104.7億トンだった世界で発生した廃棄物は、2050年には倍以上の約223.1億トンに増加するとの試算が2011年にされています。
廃棄物が大量に発生したことで、埋め立て処分場の問題など環境への悪影響が深刻化しているのです。しかも、発展途上の地域では廃棄物処理への意識が未発達だったり、廃棄物を適切に処理する技術が未熟だったりするため、環境負荷のさらなる増大が懸念されています。
3-2 資源の枯渇
世界のエネルギー消費量は年々増え続けており、2019年版の「BPエネルギーアウトルック」によれば、2017年と比べ2040年の世界の1次エネルギー消費量は、32%増加すると見込まれています。
その増加分の多くは、中国やインドなどの近年経済発展を遂げている新興国と見られており、さらに世界的な人口増加の影響も無視できません。
しかしながら、生活になくてはならない電気をつくり出す天然資源の埋蔵量には限りがあります。2020年末に発表されたデータでは、このままのペースで資源を使い続けると、石炭は残り約139年、石油は約54年、天然ガスは約49年分しか残されていないと指摘されており、世界的に資源の涸渇は大きな課題となっているのです。
参考:2040年に向け世界の1次エネルギー消費の伸びは減速|ジェトロ(日本貿易振興機関)
参考:【1-1-06】 世界のエネルギー資源確認埋蔵量|エネ百科
3-3 地球温暖化の進行
「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」による経済システムが構築された20世紀以降、先進国を中心にエネルギーを大量に消費してきました。近年では、さらに新興国の急速な経済発展や世界的な人口の増加により、化石燃料の利用は急速に増加しています。
元々二酸化炭素(以下、CO₂)は地球上に存在する物質です。私たちの経済活動によりCO₂を代表とする温室効果ガスの排出量が大幅に増えてしまったのです。
欧州連合の気象情報機関は、1940年以降の記録を分析した結果、世界全体の平均気温が最高値を更新したと2024年7月に発表しました。温室効果ガスの排出量を急速に削減しなければ、望まない気象記録はさらに更新されると警鐘を鳴らしています。
参考:世界の平均気温が観測史上最高を更新 地球温暖化の影響が深刻化|朝日新聞デジタル
循環型社会と持続可能な社会との違い
循環型社会と同じように、持続可能な社会もよく見聞きする言葉でしょう。持続可能、すなわちサステナブルな社会とは、現代の要求を満たしながらも、将来の世代が必要とする地球環境を損なわない社会のことを指します。
この持続可能な社会を実現するための、重要なカギとなるのが循環型社会です。3Rの推進をはじめとする社会における物質の循環を通して、自然の循環を尊重し地球環境に沿う健全な循環を目指すことは、持続可能な社会に不可欠になるでしょう。
また、低炭素社会や自然共生社会に向けた取り組みを同時に行うことも、持続可能な社会の実現に大切だといわれています。
循環型社会とSDGsの関係
世界で循環型社会が求められる背景のひとつに、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsの存在があります。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、「地球上の誰一人取り残さない」との理念を掲げ、人類が今後も地球上で暮らし続けていくために達成すべき17の目標と行動計画をまとめたもののこと。今を生きる私たち世代のニーズを満たしながら、将来世代のニーズも満たせる環境や能力を損なわない開発のことです。
中でも、SDGs12「つくる責任つかう責任」は、「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」を抑制することを見すえた目標であり、循環型社会と親和性が高いといえるでしょう。今も世界で生産されている食品の約3分の1は廃棄されており、また、イギリスのBP社が2021年に発表した資料では、電気をこのままのペースで使い続ければ約50年で石油や天然ガスは枯渇するともいわれています。
循環させることなく資源を使い、消費し、廃棄する従来のやり方は通用しなくなってきているといえるでしょう。SDGsは2030年までの達成を目指しており、そのためにも循環型社会の実現を目指すことは非常に大切です。
参考:食品ロスの現状を知る|農林水産省
参考:天然ガスはいつまであるの|東京ガス
参考:【1-1-06】 世界のエネルギー資源確認埋蔵量|エネ百科
循環型社会の実現に向けた取り組み
循環型社会の実現に向けた日本の取り組みを見てみましょう。
日本における循環型社会の実現を進めるための枠組みを定めた法律が、2000年に公布・施行された「循環型社会形成推進基本法」です。この法律の第一条に、環境基本法の基本理念にのっとり「循環型社会の形成について、基本原則を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにする」とあります。
この基本法は、総合的な廃棄物・リサイクル対策を計画的に進めていくための基盤づくりや、個別の廃棄物やリサイクルに関する法律の整備、循環型社会を目指して実効力のある取り組みを進めるために制定されました。
この基本法に基づき、具体的な施策の方向性を示す「循環型社会形成推進基本計画」が策定されています。2024年8月、第五次循環型社会形成推進基本計画が閣議決定され、「循環経済への移行は、気候変動、生物多様性の保全、環境汚染の防止等の環境面の課題と合わせて、地方創生や質の高い暮らしの実現、産業競争力の強化や経済安全保障といった社会課題の同時解決にもつながるものであり、国家戦略として取り組むべき重要な政策課題」と明記されています。
参考:循環型社会形成推進基本法(平成十二年法律第百十号)|eGov法令検索
参考:第五次循環型社会形成推進基本計画の閣議決定及び意見募集(パブリックコメント) の結果について|環境省
循環型社会の実現に向けた企業の取り組み
これまで、大きな枠組みにおける取り組みを見てきました。では企業は、このミッションに対してどう取り組んでいるのでしょうか。
ネスレ日本にはペットの健康・栄養、人とペットの共生、さらには持続可能な未来のためにさまざまな取り組みを行っているネスレ ピュリナ ペットケア(以下、ネスレ ピュリナ)があります。
このネスレ ピュリナでは、2022年3月から、主力製品のねこ用おやつ「モンプチ クリスピーキッス」大袋製品24品目の外袋をプラスチックから紙パッケージに順次変更しています。
この紙パッケージは、雑がみ類として古紙回収に回してリサイクルすることが可能な素材です。
紙パッケージへの変更について、詳しくは下記にまとめていますので、ぜひご覧ください。
循環型社会の実現に向けて私たちにできる身近な取り組み
持続可能な社会の実現のためには、従来の一方的な消費社会ではなく循環型社会へ移行していくことが重要であるという理解が深まってきたと思います。
もちろん、国や地域などの大きな枠組みの取り組みは大きなうねりを生みますが、そうした社会をかなえるためには生活者である私たち一人ひとりの行動や意識の変化もとても大切です。
日頃からごみを出さないようにリデュースを意識し、ものを入手する際はリユースできるかどうかを考えて選び、廃棄する時もリサイクルできるように適切に分別するなど、こうした3Rを、日常的に実践し継続していく。
そうしたアクションは、SDGs12「つくる責任つかう責任」にもつながっていくものでしょう。
一人ひとりの取り組みが循環型社会の実現につながる
将来の世代へ向けて環境に配慮した持続可能な社会を実現するには、今を生きる私たちは限りある資源を大切に使い、循環させていくことが求められています。サステナブルな製品を見極め選択することも、日常的に実践できるアクションのひとつといえるでしょう。
ネスレは、温室効果ガス排出量実質ゼロや、森林破壊ゼロのサプライチェーン、そして再生農業の大規模な推進など、多岐にわたるサステナブルな目標への取組みを継続的に行っています。
また、サーキュラリティ(循環性)を向上させるより良いパッケージの開発をはじめ、若年層の機会創出や、貧困に負けない活力あるコミュニティの育成など、多様性のあるインクルーシブなチームの構築にも取り組んでいます。
ネスレのサステナビリティに関する取り組みは、下記のリンクからご覧いただけます。