Sort by
Sort by

ネスレのブランドヒストリー 「カイエ」 チョコレート

ブランドヒストリー 「カイエ」

チョコレートの楽しみ方を変えたブランド 「カイエ」

1825年は、歴史の流れを変えたと論じられる多くの出来事があった年でした - 現在のようなシャツの襟の誕生から、食品を保存するブリキ缶の特許まで、ありとあらゆることです。

スイスで最古の、そして最も愛されているチョコレートブランドの1つが生まれた年でもあります。

スイス、ヴェヴェーの食品販売業のオーナー、フランソワ=ルイ・カイエが、イタリアでの休暇から帰国しました。彼は、イタリアで、これまでになじみのない、挽いたカカオ豆と砂糖を調合した食品を発見しました。

フランソワ=ルイ・カイエは、チョコレートに精通していました。彼の食品店で1819年からチョコレートを「カイエ」の名で販売していました。しかし、彼が販売していたチョコレートは、粉砕されたカカオ豆から作られた苦みのあるペーストで、主に強壮剤や飲み物に追加するために使われていました。

彼がイタリアで出会ったチョコレート – 挽いたカカオ豆と砂糖を調合したもの – は新しくエキゾチックでした。最高級の食料品店で販売され、富裕層しか入手できない価格で販売されていました。

フランソワ=ルイ・カイエは、高品質なチョコレートを製造するため、スイスにあったチョコレート工場を買収しました。カカオ本来の苦味を洗練したいと考え、挽いたカカオ豆のペーストに砂糖、シナモンとバニラを加えました。

彼は、この新しいチョコレートも「カイエ」の名で販売しました。

甘き成功

カイエと彼のライバルの働きによって、この時にチョコレートはよりおいしくなり、より手頃になりましたが、今日私たちがおいしく食べているものとはまだ別物でした。

これを変えたのは、カイエの義理の息子であるダニエル・ペーターと、その隣人でネスレを創業し、乳児用シリアルを開発したアンリ・ネスレの間に生まれた友情でした。

何年も実験したものの、ダニエルはミルクとチョコレートをうまく混ぜることができませんでした。彼は、水分含有量が多いミルクと、脂肪を含有するチョコレートマスを混合するのは不可能だと気付きました。

思いがけず、ペーターはアンリ・ネスレがつくった煉乳に解決策を見出しました。液体であっても一部の水分を抽出すれば、カカオと混合できるのです。

ペーターは、世界初のミルクチョコレートバーと初の粉末ミルクチョコレート(水と混ぜる - 飲用)の開発に成功しました。どちらの製品も「ペーター=カイエ」の名で販売しました。

イノベーティブな気質と、共通するチョコレートへの興味によって引き合わされた、カイエの孫であるアレクサンダー=ルイ・カイエと、ダニエル・ペーター、そしてアメデ・コーラーとアンリ・ネスレの会社の後継者たちは、異なる生産技術と流通網を1つの会社に統合するために協力しました。

彼らはミルクチョコレート製造の新たな戦略展開を続けました。

アレクサンダー=ルイ・カイエは、現在「メゾンカイエ」として知られている工場をスイスのブロに建設しました。ブロには、牛が数多く放牧されており、工場の操業に必要な水も十分ありました。彼は、工場とミルク供給が近接していることを利用して、煉乳だけをミルクチョコレートに使用しました。こうすることで、粉末ミルクを使用する競合製品に比べて、よりクリーミーでなめらかになります。

数世紀にわたる秘密

「カイエ」は、スイス最古のチョコレートブランドの1つであるにもかかわらず、200年近くもの間スイスの秘蔵の逸品とされ、事実上スイス国外では知られていませんでした。

「昔から『カイエ』はとてもスイスらしい」と、ネスレのコンフェクショナリー事業部長、サンドラ・マルティネスは説明します。

「『カイエ』は、今なお歴史ある『メゾンカイエ』工場で製造されています。年月を重ねるにつれて機械は変わりましたが、特殊な製造技術とチョコレートのレシピはほぼ同じままです。」

工場では、今も工場から30キロ以内にある牧草地の牛のミルクだけを使用しています。「工場の社員は、『カイエ』の原料になるミルクを出す牛の名前まで知っている、とよく言います。」とサンドラは笑います。

レガシー(遺産)

スイスで「カイエ」はよく知られていましたが、ネスレが国際的なスーパープレミアムチョコレートに参入するためのブランドを決定する際、サンドラとそのチームにとって当然の選択ではありませんでした。

「ネスレはこのカテゴリーに参入すべき時期にありました。しかし当初は『カイエ』がそのためのブランドなのか確信を持てませんでした。」とサンドラは語りました。

「カイエ」はチョコレートの4人の先駆者が融合したため、調和のとれたアイデンティティーを持っていなかったのです。それぞれのチョコレート製品が大きく異なっていたので、チームは昼夜を問わず、ネスレの歴史資料の部署で「カイエ」の理解に努めました。

彼らは、古いパッケージデザインが時代を大きく先取りしていたことを発見しました。現代では複製が難しいディテールと品質レベルを持つ、スイス固有のモチーフです。「カイエ」ブランドとその強烈なスイスらしさの背後にあるイノベーションと美を強く感じさせます。

「『カイエ』の品質は卓越していましたが、豊かなデザインの歴史に思わず息を呑みました。」とサンドラは語ります。「それを知った時にこれだとわかりました。これがネスレ初のスーパープレミアムチョコレートになるのだと。」

「カイエ」の唯一無二なブランドイメージは、直近のチョコレートの箱のパッケージでよみがえりました。これはスイスの工匠マリアン・デュブイが手仕事でデザインしています。デュブイはスイスのデクパージュ技術(紙の切り抜きを使う工芸)をシルエットをベースにしたデザインに取り込んでいます。

時代を超えて

「カイエ」は、今もチョコレートに煉乳を使用するスイスでたった1つの大手メーカーであり、独特のクリーミーな味を愛するスイス人に非常に人気です。

「スイスを歩くと『カイエ』を至るところで目にされるでしょう。」とサンドラは話します。

「スイス人は、何世代にもわたって『カイエ』に親しんでいます。『カイエ』のチョコレート箱は、誕生日、記念日、クリスマスといった大きなイベントには欠かせません。」

なお、ネスレは「カイエ」を2015年10月1日から国際市場で販売しています。

 

*記事内のデータは2016年時点のものです。