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誕生80年を迎えた「キットカット」:「モーメント・マーケティング」でチョコレートブランドのアイコンがデジタル世界を制す

KIT KAT, 80th

80歳でデジタル時代の流行仕掛け人になったと言える人は今までほとんどいないでしょう。では、80周年を迎えた「キットカット」はどのようにしてソーシャルメディアで新旋風を巻き起こしたのでしょうか。

 

 

赤い包みのチョコレートフィンガーがトレードマークの「キットカット」は1935年に誕生しました。以来、「キットカット」は長きにわたりそのブランドを維持し続け、決して立ち止まることはありません。

タイム誌による、史上最高の影響力を誇るキャンディーバーに選ばれたこのウエハース入りのチョコレートは、80年もの間、ビジネス環境や消費者の嗜好の変化に挑戦し続け、ソーシャルメディアにおける日用品ブランドの世界トップ10入りを果たしました。

その秘訣は何でしょうか?それは迅速に行動し、時事問題あるいはニュースを活用する力「モーメント・マーケティング」を最大限活かすコツを得ていることなのです。

「キット カット」、宇宙へ

1938年以来、「キットカット」は人々のブレイクと結びついてきました。”Have a break, Have a KitKat.” というクラシックなキャッチフレーズは60年近くに渡ってブランドの代名詞として存在してきました。

例えば、自由時間にインターネットを使うようになるなど、人々のブレイクの形が多様化するに伴い、「キットカット」はデジタル上で強い存在感を示すことの必要性を認識するようになります。

デジタルブランドとしての転機は、マーケティングチームがインターネット上で消費者と関わる「モーメント・マーケティング」を採用したことに始まります。

2012年、レッドブルが命知らずのオーストリア人、フェリックス・バウムガルトナーと契約し、20マイルを超える高さの成層圏からのスカイダイビングという記録破りの挑戦をすることになった瞬間から全てが始まりました。しかし、悪天候によりフェリックスはジャンプを何度か延期しなければなりませんでした。

インターネット上でも不安の声が聞かれるようになった頃、「キットカット」はフェリックスを元気づけるため、フェイスブックに「少し時間がかかるかもしれない…フェリックス、Have a break, Have a KitKat.」というユーモアあふれる投稿をしたのです。ネスレの「キットカット」グローバル責任者のスチュワート・ドライバーグは、その時のことを「その投稿は瞬間的なバイラル効果を発揮しました。 
 

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我々はその効果をそこで止めたくありませんでした」と振り返ります。チームは、フェリックスとレッドブルチームが天候の回復を待つ間にもブレイクを楽しめるように、ブレインストーミングを始めました。

そこで出た答えとは?「キットカット」を宇宙に送ることでした。

そのアイデアが生まれてから24時間以内の撮影に向け調整を行い、「キットカット」は気球とGoProカメラに紐で結び付けられ上昇しました。

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その映像はYouTubeにアップロードされ、#BreakFromGravity(重力からのブレイク)というハッシュタグとともにフェイスブックとツイッターで瞬く間に広がり、フェイスブックで650万回以上、ツイッターで1,000万回以上再生されました。レッドブルは「『キットカット』、サポートに感謝」とツイートし、そのバイラル効果に感謝してくれました。

「キットカット」の個性に命を吹き込む

スチュワートは言います。「これは2つのブランドがインターネット上で相互作用した初めてのケースでした。そこで我々は他のブランドにも話をしたらどうか、『キットカット』が付き合いたいのは誰だろうかと考え始めました。」

チームは「モーメント・マーケティング」を用い、スチュワートは共感しやすく遊び心たっぷりの「キットカット」の個性に命を吹き込むという新しい方法を用いて、インターネット上で他のブランドとも関わりを持つことにしたのです。

次の転機は2013年、チョコレート愛好家のローラ・エレンがお気に入りの2つのブランドにふれ「私が『キットカット』とオレオをフォローしたら、チョコレート好きも行き過ぎだよってツッコミを入れてくれていいわよ」とツイートしたのでした。

「キットカット」はすぐに公開○×ゲームでオレオに挑戦し、「キットカット」フィンガーとオレオクッキーがローラのチョコレート愛を勝ち取るための勝負に出たのです。

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翌朝、そのクッキーブランドから微笑ましい返答がありました。「ごめんね、『キットカット』、食べずにはいられなくて…#GiveOreoABreak」というツイートとともに、半分食べられた「キットカット」フィンガーの様子がアップされていました。

2つの大手菓子ブランドが繰り広げたインターネット上のゲームはソーシャルメディアで注目を集めました。2,500万回のインプレッションを勝ち取り、今でも世界中で、ブランドの個性にどのように命を吹き込むかというケーススタディとして使われています。

「デジタル化のおかげで『キットカット』は消費者にとってかつてないほど身近な存在になりました」とスチュワートは言います。

「レッドブルとオレオ、これら2つのブランドとのインターネット上における成功こそが、我々にとって最大のコラボレーションとなった「Android KitKat」でのグーグルとのタイアップに導いてくれたのです。」

「キットカット」への愛

グーグルは、数カ月にわたってインターネット上で憶測が飛び交った後、2013年の終わりに、モバイル機器向けのOS(オペレーティングシステム)のバージョン4.4に「Android KitKat」と名付け、テクノロジー業界を驚かせました。

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「グーグルからその提案について連絡があったとき、我々は次に『遊び』をともにするブランドを探していたところでした。」

「グーグルが次期のアンドロイドシステムにKで始まるスイーツやお菓子の名前を探していたことを知っていましたが、これまでのものはカップケーキやドーナツといった総称だったので、ブランド名の『キットカット』になるとは誰も予測していませんでした」とスチュワートは語ります。

「キットカット」の特徴である展開の速さに伴い、そのタイアップはネスレチームによって30分とかからないうちに承認されました。「大企業でも早く動けることを示すためでした」とスチュワートは言います。

このコラボレーションは、「キットカット」の従来のデジタル及びクリエイティブなブランドキャンペーンの最大の成功例となりました。

その中でもチームが最も大きな価値を見出したのは、そもそもなぜ「キットカット」が選ばれたのかという理由でした。 「グーグルが我々を、世界で初めてブランドとしてAndroidシステムの名前に採用した理由の一つは、単純に、彼らのエンジニアが「キットカット」の大ファンであったことでした。これこそがブランドへの愛です」とスチュワートは言います。

「お金のやりとりはなかったのです。これが『キットカット』への愛の証、『キットカット』が持ち続ける影響力の大きさの証でなくして、何なのでしょう。」

 

常に先を行く

2014年も「キットカット」はアップル社の#bendgate(ベンドゲート)として知られる話題に「私たちは曲げない、私たちはブレイクします(We don't bend, we #break”)」とツイートして参戦し、ソーシャルメディアを独占し続けました。

その投稿は2万8千回もリツイートされ、「キットカット」は数千人ものフォロワーと1万を超える「お気に入り」を獲得したのです。

「過去5年間、デジタルブランドとして前例のない成功を収めてきました。私たちは毎年モメンタムを活用し続けることを得意としてきたのです。今、新しい領域を切り拓き、常に先を行き続けるために何ができるのかを模索しています」とスチュワートは語ります。

「我々は人々に、『キットカット』でBreakするきっかけをより多く提供していきます。」