持続可能な農業なくして未来はない

5 2, 2012
ブラベック会長 水資源の管理:ケニアの東アフリカ酪農開発プロジェクトの工場へミルクを配送する農場の給水施設を訪れるブラベック会長

~ 2012年5月、フランスで開催された「第10回サステナブル・アグリカルチャー・イニシアチブ」でのネスレ会長ピーター・ブラベックの基調講演より ~

2050年までに世界で70億人分の食糧が必要になります。その需要に応えるためには世界の食糧生産量を現在の2倍にしなければなりません。

これは新しい問題ではありません。ネスレは10年前に「持続可能な農業イニシアチブ」を設立した主要消費財メーカー3社のうちの1社です。この持続可能な農業のための取り組みは、グローバルな食品産業としては唯一のものとなります。

世界の人口が増え続け、何百万人もの消費者がますます裕福になれば、品質の良い農産物不足がネスレの事業活動のみならず世界の食糧生産に対するリスクになるでしょう。

知識の共有

2002年に「持続可能な農業イニシアチブ」の枠組みが立ち上げられたとき、その目的は持続可能な農業経営の開発と実践を支援するための知識やプロジェクトを共有することでした。

ネスレはその1年前にすでに持続可能な農業のイニシアチブを始めていましたが、ネスレだけの力で農業経営に変革を促すことは困難であると認識していました。

他社と協働して、共通の指針を定め、そしてそれをサプライヤーと実践するならば、共通の問題のいくつかは解決に向かうと考えたのです。

農家の方々と共に

ネスレが直面する最大の課題は、当時も現在も、農家の方々に、いかに確実にこれらの持続可能な指針と基準を守っていただくか、いうことです。

これまでの12年間ネスレは持続可能な農法について農家の方々との取り組みを継続的に強化してきました。

現在、50カ国あまりで68万人の農家の方々がネスレのサプライチェーンに携わっています。その多くは小規模農家です。

また、ネスレの「ファーマー・コネクト・プログラム」により、他のサプライヤーとの取り組みを策定するのに必要な知識、理解が得られました。

そのプログラムは、現在ネスレが主要な取引先を「ネスレ サプライヤー規約」に照らして評価し、その事業活動がより持続可能なものになるための支援に活用している「責任ある調達プログラム」の基礎になっています。

サプライヤーとのこのような取り組みは、ネスレの事業戦略である「共通価値の創造」の一環です。ネスレは企業が長期的に成功するためには、株主にとっての価値を創造すると同時に事業を行っている地域にとっての価値も創造しなければならないと考えています。

よりよい関係づくり

10年を経た今、「持続可能な農業イニシアチブ」のメンバーは、他の多国籍企業をはじめ農業やその他の協同組合など40にも及びます。

この取り組みを通じてネスレは、NGOや政府間組織などの異なるステークホルダーとのより良好な連携のしかたを学びました。

特定の問題に関する共通のコミュニケーションにより、すべてのメンバーがネスレの事業活動と事業環境をより深く理解することができました。

慢性的な水不足

まだ多くの問題が山積しています。容認しがたい、そして持続可能でない行動や慣習を変えるか、あるいは根絶しなければなりません。

それらの問題の中で最も深刻なのが世界的な水の消費です。これは永遠の問題ですが、まだ過小評価されていると考えています。

現在、世界の取水の70パーセントが農業関連で使われています。これは食糧生産における主たるリスクであると考えています。必要とされる農産物の収穫のために必要な水が大量に不足するのです。

これはまた大きな改革の可能性がある分野でもあります。農業に使用されている水の量は植物自体が必要とする量のおよそ2.5倍です。つまり相当量の節約が可能であり、またそれをしなければなりません。

世界的な水の使用量を大幅に減らすのであれば、その取り組みは地域単位で行わなければなりませんし、政府レベルの主導が必要です。

生産を増やし、無駄を減らす

もう一つの大きな課題は無駄です。持続可能な農業とは、天然の再生可能な資源を無駄にせず、汚染せず、また破壊することなく使用することです。

毎年世界中の食物供給の行程で私たちの食糧のおよそ3分の1は失われたり廃棄されたりしています。その量は10億トンを超えます。

農産物の生産量を増やす一方で、無駄を減らし、自然の生態系を新たな農地に変えなくても済むよう、より持続可能な農業生産方法を見つける必要があります。

変革へのきっかけ

私たちが共通して抱える諸問題の解決への道のりは遠いですが、食品業界が持続可能な農業のために結束すれば、変革のための効果的な促進力になれることを「持続可能な農業イニシアチブ」は示しています。

しかし食品業界単独では機能しません。私たちにはそれぞれ役割分担があります。政府は方向性を打ち出し、企業は投資して技術革新を起こし、市民社会は地域や人々を動かすことができるのです。

今後の10年を見据えると、「持続可能な農業の未来」を語るのは間違っているように思います。むしろ、「持続可能な農業なくして未来はない」と言うべきなのです。