共通価値の創造 : 長期的な視点

共通価値の創造 : 長期的な視点 
創業150周年を迎えて

2016年、ネスレが創業150周年を迎えるにあたり、1866年に「ミルクメイド」ブランドを立ち上げたスイスのアングロ・スイス練乳会社のページ兄弟の功績に敬意を表したいと思います。アングロ・スイス系の起源をもつことから、ネスレはスイスの酪農家と密接に協力する方法を学びました。ページ兄弟は、現在私たちが「ミルク生産地区」モデルと呼ぶ製酪業における協力体制の初期の形を作りました。これが後に世界各地での「ミルク生産地区」の設置につながりました。例えば、第二次世界大戦前にブラジル、1960年代にインド、1990年代には中国などにです。また同時に発展途上国や新興国の何十万人もの酪農家、コーヒーやカカオ農家と協力し、技術支援や助言を提供してきました。そして、現在の社名の由来となったアンリ・ネスレの功績も忘れてはなりません。アンリ・ネスレは1867年、子どもの命を救う乳児用シリアルの開発に成功したことを機に会社を設立し、今日のネスレの栄養・健康・ウェルネス戦略へ至る道を開きました。アンリ・ネスレを動かしたのは、隣人の子どもの命を救い、さらに大きく言えば乳児死亡率を低下させたいという思いでした。ネスレは今日も、すべてのライフステージで科学に基づく栄養と健康のソリューションで生活を向上させることを目指し、お客さまご自身やご家族のケアを支援します。これまでの歩みを振り返ると、企業が長期にわたって成功し、株主の皆さまに価値を創出するためには、社会にとっての価値を創出しなければならないという私たちの信念の源があります。現在、私たちはこれを共通価値の創造(CSV)と呼んでいますが、この実践は1866年にまでさかのぼります。

共通価値の創造は、優れた株主価値をもたらすと同時に、人々の栄養・健康・ウェルネスの向上を支援する企業を築くため、ネスレが事業全体で執っているアプローチです。栄養に加えて、水にも重点を置いています。世界の多くの地域で水不足が極めて深刻な問題となっており、水はまさに食料安全保障の要であるからです。また、農業従事者と農村コミュニティ、小規模ベンチャー企業とサプライヤーの総合的なウェルビーイングがネスレ事業の長期的な成功に本質的に関連することから、農村開発にも力を入れています。さらに、ネスレ工場の操業と、事業展開する国やコミュニティの持続可能な成長と発展に必要な環境と社会のサステナビリティに対するコミットメントについても、積極的に達成しようと取り組んでいます。現在、189カ国で製品を販売するネスレは、社会における立場から、機会と責任の両方を認識しています。つまり、各国法や国際規格と、『考働規範』『経営に関する諸原則』『マネジメント及びリーダーシップの基本原則』に示されるネスレ独自の価値観と原則を順守して事業を行わなければなりません。ネスレのような企業が繁栄するには、150年にわたって培った確固たる一連の原則と価値観を枠組みとした長期的な視点に立つ必要があります。私たちの原則と価値観の基盤となるのは、尊重――すなわち、人、文化、環境、そして私たちが住む世界の未来を尊重することです。したがって、ネスレの39のコミットメントは、単なるコンプライアンスを超えたものであり、私たちが信条とする共通の価値観に基づき、共通価値の創造における活動を築く上で基盤となるものです。

透明性のある報告

2012年、ネスレが向かっている戦略的な方向性と、説明責任を果たすための基準を明確に提示するため、事業のあらゆる分野を対象として、将来を見据えた一連のコミットメントの発表を決定しました。今年は39を数えるネスレの社会的コミットメントが、栄養、水と農村開発という注力分野から直接導き出されており、環境サステナビリティ、人権、コンプライアンスと人材も含んでいます。
    以下のグループは、ネスレの継続的な事業成功のために欠かせない存在です。

2015年の主な成果には、次のようなものがあります。

栄養については、次のことを達成しました。
  • 健康的な食生活と、運動も含めた健康的な生活習慣主要指標の2015年のパフォーマンスを推進するための「ネスレ ヘルシーキッズ プログラム」を84ヵ国で実施。
  • 微量栄養素を強化した食品飲料を全世界で1,920億サービング出荷。
  • 強化された『子ども向けマーケティングコミュニケーション方針』を導入、実施を厳しく管理。
  • ネスレの食品飲料製品に含まれる食塩、脂肪と糖類を、消費者に好まれる味を維持しながら削減する取り組みを世界規模で継続。
については、重大な社会的懸念のある課題かつ食料安全保障の要であり、次のことを達成しました。
  • 新しい『水と公衆衛生に対する人権尊重のためのネスレのガイドライン』を編集。
  • 乳業工場を現地の地下水を使わずに操業する取水量ゼロ技術により、グローバル・ウォーター・アワードの企業ウォーター・スチュワードシップ・アワードを受賞。
  • 全製品カテゴリーで製品1トンあたりの直接取水量を削減し、2005年と比較して全体で41.2%の削減を達成。

農村開発については、農業従事者やサプライヤーのウェルビーイングがネスレの成功と密接に関わっており、次のことを達成しました。

  • 12の主要な材料と原料の40%を追跡可能にする目標を達成。
  • カカオ、バニラやヘーゼルナッツなどの主要なカテゴリーにおける児童労働の根絶に引き続き取り組み、47,962の農業従事者に研修を実施、42の学校を建設または改修、児童労働モニタリングと改善要請システムの適用対象となるコートジボワールのカカオ農業協同組合の割合を50%に拡大。
人材については、次のことを達成しました。
  • Nestlé needs YOUthプログラムを世界規模の取り組みに発展。
  • 「ネスレ マタニティー保護方針」を新たに発表。
環境サステナビリティ人権については、次のことを達成しました。
  • 食品ロスと廃棄を削減するためのコミットメントを発表。
  • 2015年までにネスレ工場の10%で廃棄物ゼロを実現するという目標を達成。
  • 人権問題に関して国連の指導原則報告枠組みを導入。

ネスレは、進捗状況とさらに取り組みが必要な分野について、透明性を持って報告します。2011年以降、ネスレはグローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)の枠組みに沿って報告し、サステナビリティ報告に関して期待される厳密性と透明性を高める取り組みを支援しています。今年は、GRIのG4ガイドラインの包括オプションと食品加工業界補則に「準拠」して報告を行う2年目の年です。ネスレの報告書はGRIのガイドに準拠し、重要な課題、または重大な経済的、環境的、そして社会的影響を反映する課題、さらに実質的にステークホルダーの評価に影響する課題を取り上げています。
    GRI指標を網羅した完全版の報告書は、ネスレのCSVウェブサイトでご覧いただけます。また、今年は初めて、新たに発表された国連の指導原則の人権報告枠組みに沿った報告をしています。人権の尊重が、社会におけるネスレの役割から切り離せないものであることを示すため、既存のCSV報告書に特定された顕著な11の人権問題についての報告を盛り込みました。サステナビリティ報告は、単にケーススタディーのストーリーやデータを集めたものではなく、社内外のステークホルダーや株主の皆さまにに示す形で持続可能な発展に向けたネスレのコミットメントを取り込み、改善するという総合的な活動なのです。ネスレは国際統合報告協議会(IIRC)の一員として、ネスレの事業と社会活動との結びつきを継続的に紹介していきます。

持続可能な開発目標を支援するCSV

本報告年度は、ネスレにとってだけでなく、国連、市民社会や民間部門全体にとっても重要でした。2015年9 月、国連加盟国193カ国が、今から2030年までの地球規模の優先課題を定めた17の新たな「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択しました。私たちはネスレのコミットメントをSDGsに照らして見直しており、ネスレの事業の性質から考えて、世界規模でネスレが及ぼす影響を最大限に高めることができる特定の目標に焦点を当てるべきだと考えています。
    2015年版『Nestlé in society 共通価値の創造』は、社会的コミットメントの達成状況に基づく3冊目の報告書です。過去1世紀半にわたるネスレの成長は、事業と社会的ニーズを結びつける統合的思考に基づいて築き上げられてきたと私たちは確信しています。この基本的な信条は、生活の質(クオリティ オブ ライフ)の向上への貢献を加速させ、企業が長期的に繁栄するためには、株主の皆さまと、事業展開するコミュニティ、そして社会全体にとっての価値を届けるべきだという信念に忠実であり続ける助けとなっています。