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体重70kg男性の血液中のブドウ糖量は約5gである。これに対して、缶コーヒー 1缶に10g以上の糖質が含まれており、それがすべて血液に吸収されると血糖値は3倍になる計算となる。しかし、糖尿病患者でなければ、そのようなことはあり得ない。これは、もちろん消化管での吸収がそんなに速いわけではなく、摂取した糖質の80~90%以上を処理する骨格筋により、ブドウ糖が“うまく”吸収されて血糖値を維持しているからである。
このように、安静時には食事をしても、それほど血糖値は上昇しない。一方、低い強度から中等度の強度でも運動時間が長くなければ、血糖値(肝臓からのブドウ糖の放出量と骨格筋を中心とした臓器でのブドウ糖消費量の収支)はそれほど変化しない。たとえば、最大酸素摂取量の50%程度の強度運動でも、血液から供給された約1gの糖質が1分間に消費される。
前述したように血液におけるブドウ糖量は5g程度なので、単純に計算すれば、もし肝臓からのブドウ糖の放出がなければ5分間で血糖値が0になるが、このようなことも通常あり得ない。これは、運動時においても糖分を消費する骨格筋とブドウ糖を供給する肝臓は協調して血糖値を維持しているからである。このように、身体活動中の糖代謝はある程度、コントロールされている様に見える。このコントロールは、骨格筋での糖取り込み速度と肝臓からのブドウ糖放出量の繊細な制御によりなされている。
一方、筋のグリコーゲン濃度は最大酸素摂取量の70%程度の強度の運動により、最も減少し、それが疲労の要因としてあげられている。最大酸素摂取量の100%を超えるようなミドルパワー以上の強度の運動では、骨格筋のグリコーゲン濃度は枯渇せず、筋のグリコーゲン濃度は、運動の疲労と関係はない。
本サテライト・シンポジウムでは、このように身体運動を発揮パワーでローパワー,ミドルパワー,ハイパワーの運動と分類し、それらの運動により変化する活動筋,肝のグリコーゲン濃度との関係から、運動前の糖質準備量と、各パワーの運動の疲労について、議論する。また、骨格筋の糖代謝に関与する骨格筋の糖取り込みの機序についても言及する。
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京都府立医科大学(当時)の吉村寿人らが世界に先駆けてスポーツ貧血を公表して以来1-2)、スポーツ貧血発現機序に関する多くの研究があり、その種類は1)鉄欠乏性貧血、2)溶血性貧血、3)消化管出血や下血、4)希釈性貧血に別けられることが示された。しかし、多くの精力的な研究にかかわらず、食生活と赤血球代謝、鉄不足状態と赤血球代謝については必ずしも十分に解明されているとは限らない。勝つことを目指して日々トレーニングを重ねる選手にとって、本質的な課題解決がなされないまま現在に至っていることとなる。
そこでわれわれはまず、現在の大学女子スポーツ種目別貧血発現実態を調査するとともに、運動の直接的効果が赤血球の合成と分解に及ぼす影響について検討し、さらには合宿や1ヶ月間の食事提供による貧血発現予防を試みることとした。
1.スポーツ種目と貧血発現実態 大学生の場合、男女を問わず貧血を出現させる選手が多く、特に激しいトレーニングが連続的となる試合期前や試合後期に「鉄欠乏性貧血」が頻出した。しかも、貧血発現にいたらない「鉄不足状態」に陥る選手は鉄欠乏性貧血発現選手よりも多かった。このときの食事摂取状況をみると、朝食の欠食や菓子類からのエネルギー摂取、野菜の摂取不足といった特徴があり、食意識・食態度の改善が求められる。試合期や激しい練習期の食事に対する関心や意識に低さと鉄欠乏性貧血発現との関わりが示唆された。
2.鉄欠乏性貧血出現メカニズム:身体活動と赤血球合成能力 赤血球分解の指標として赤血球膜浸透圧抵抗性(osmo)およびハプトグロビン(hp)を、赤血球合成の指標としてヘム合成の第2律速酵素とされるδ-アミノレブリン酸デヒドラターゼ(ALAD)活性と網状赤血球数(ret)、血中エリスロポエチン(epo)濃度を用いた。その結果、赤血球膜浸透圧抵抗性やhp濃度は運動終了6時間後まで有意な変動が見られなかった。一方、ALAD 活性は有意に上昇するとともにepo濃度およびret濃度も運動終了後時間とともに上昇した。すなわち、赤血球分解が亢進しない条件の一過性自転車駆動時でも、赤血球合成能力は亢進していることが明らかとなった。適切な食事補給が鉄欠乏性貧血を予防できる可能性を示唆する。 体内鉄状態が悪化している場合は、運動による赤血球合成能力の亢進は認められなかった。このことから、鉄欠乏性貧血に陥る前に十分な手当ての必要性が示唆された。
3.食事介入と鉄欠乏性貧血発現 大学女子新体操選手を対象に1ヶ月間に及ぶ食事介入を実施し、鉄欠乏性貧血発現状況及び体内鉄状態を検討した。その結果、鉄欠乏性貧血の発現は完全に予防することはできなかった。δ-ALAD活性の増加と身体活動量の増加に伴う溶血亢進が確認された。一方、大学男子長距離選手を対象に2ヶ月間にわたってヘム鉄を投与した結果、溶血を抑える可能性が示唆された(科研費No.13680163 代表 川野因、No.16500521 代表川野因)。 これらの結果をもとに食事によるスポーツ貧血発現予防の可能性を考察する。
1:吉村寿人:運動鍛練時の貧血に関する研究、体力科学8,167-168,1959. 2:H. Yoshimura. Anemia during physical training (sports anemia). Nutr. Rev., 28, 251-253, 1970.
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持久運動における新しい炭水化物研究の実際的な利用
| エリック ザルタス |
| ネスレ ニュートリション USA | |
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45分以上継続して運動する場合、炭水化物を摂取することで遂行能力を改善する事は一般的に知られている。この改善効果は、筋グリコーゲン量が低下した運動後において、血中グルコースの維持と炭水化物の分解速度を高めることで起きていると考えられる。
安定同位体または放射性同位体を用いて、摂取した炭水化物の分解速度を測定したところ、運動中にグルコースあるいは他の単糖類を摂取してからの炭水化物分解速度のピークは、炭水化物の摂取速度に関係なくおよそ1グラム/分であることがわかった。例えば、訓練された自転車競技者の場合、50%程度の強度で120分間運動した場合、被験者は1.2グラム/分あるいは1.8グラム/分でグルコースを摂取したが、摂取した炭水化物分解速度の計算上のピークは、被験者間で有意差はなく、それぞれ0.80グラム/分と0.83グラム/分であった。グルコース投与を速めても効果が十分あらわれない理由としては、運動中の腸管内におけるグルコース移送系が飽和状態であるためと考えられる。
ここ数年間で多くの研究成果が発表されているが、Jeukendrup 等はグルコースとフラクトースの2:1の組合せたものを与えると、グルコース単独投与に比べ、摂取した炭水化物の分解速度が全体として20-55%増加することを示した。この効果は、グルコースとフラクトースの腸管吸収における移送メカニズムが異なり(SGLT-1とGLUT-5)、その結果、炭水化物の吸収速度を高めることになると説明されている。この研究において同じエネルギーのグルコースと比べた場合、グルコースとフラクトースの組合せは、持久運動選手に多くのメリット、例えば、気温が高い状況下での5時間にわたるペダル漕ぎの持続運動中での、胃の満腹感の減少、水分吸収の増大がみられた。
走者、自転車競技者、トライアスロン選手などの持久運動選手は、通例、練習中及び競技中に必要とする炭水化物と水分を補うために、スポーツ飲料や水に加えて炭水化物ジェルを使用している。ネスレのパフォーマンス栄養ブランドである「パワーバー」では、上記の研究における新しい知見に基づき、スポーツ飲料及び炭水化物ジェル製品のグルコース:フラクトースの比率を2:1にした。製品開発の観点から見ると、フラクトースを増量することになり、とても甘い味になってしまう。さらに、ヒト及び動物モデルでの試験で、持久運動によって甘味への感受性が高まることも報告されている。そこで、簡単に分解される無味のグルコースポリマーであるマルトデキストリンを、甘味を抑えたグルコース源としてスポーツ飲料と炭水化物ジェルに配合した。炭水化物ジェルでは、ナトリウムを増やすことで、さらにフラクトースによる甘味を抑えた。ナトリウムの添加は、運動中に炭水化物ジェルと水分を摂る運動選手にとっては、汗で失われるナトリウムの補給ができる以上の利点があり、これは炭水化物電解質スポーツ飲料ではよく見受けられるが、炭水化物ジェルでは珍しい。
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