5年がかりのリゾット:ソーラー・インパルスの活力源となる食をネスレがいかに設計したか

6 4, 2015

きのこリゾット、ポテトグラタンとカレースープ。太陽光をエネルギーにして飛ぶ飛行機(ソーラー・インパルス)で、初の世界一周を試みる操縦士の活力源となっているのはこんなメニューです。



一見、普通ですが、実はこれらの料理を目的に沿うよう完成するため、スイス、ローザンヌのネスレ リサーチセンター(NRC)の8名の科学者からなるチームは、研究開発に5年と6,000時間以上を費やしました。

太陽光をエネルギー源とするソーラー飛行の世界記録を破ろうとしている二人の操縦士、ベルトラン・ピカール氏とアンドレ・ボルシュベルグ氏が現在食べている全ての食品は、アミラ・カシス博士をリーダーとするネスレのチームがテーラーメードの食事計画とともに開発したものです。

与圧されていないキャビンで、高度27,000フィートを飛行する操縦士に必要な栄養を確実に食事でとってもらうことは容易なことではありません。食品とパッケージの両方が、極限の気温と変化する気候条件下でも傷まないよう、特別に設計されました。摂取しやすく、厳密な重量制限を守り、しかも美味しくなければならないのです。

新開発パッケージをテスト

「何度も失敗してはやり直しました。条件に耐えうるか、新開発のパッケージや食品そのものをテストしました。操縦士にとって最も重要なのは必要なレベルの栄養補給です。様々な要素を完璧にするには時間がかかりました。」 とカシス博士。

高所では食欲が減退するため、操縦士の食事は大きく2種類に分かれています。高度3,500メートル以上用の高所バージョンは、小分けにされた高エネルギー、高炭水化物、脂肪分の多い食品から構成されます。高度3,500メートル以下用バージョンは、高タンパク食品で、一食あたりの分量も多いものなっています。



記録に挑戦する間、操縦士たちは窮屈で隔離された状態で最長6日間の飛行を繰り返します。 睡眠休憩は約20分で、体を動かす機会はほとんどありません。

ご褒美と安らぎを提供

「私たちの仕事は、操縦士たちに栄養的にバランスのとれた食事だけでなく、ご褒美と安らぎをも提供することでした。」とカシス博士。生理学者、栄養学者、食品科学者から成るカシス博士のチームの仕事は、ピカール氏、ボルシュベルグ氏それぞれの栄養プロファイルを評価することから始まりました。これには、彼らの炭水化物、脂肪、蛋白質の必要量の算定と、それが12回の飛行と500時間の飛行時間を必要とする35,000キロの旅でどのように変わっていくかの見極めが含まれます。

NRCの代謝ユニットで行われたテストでは、操縦士本人たちのエネルギー消費の評価などが行われました。 これは人間の体が、炭水化物や脂肪などから毎日何カロリーを燃焼させているかを測るものです。

ネスレの研究者たちは、二人の操縦士それぞれの筋肉量を測り、どの程度の量の蛋白質を食事に加えるべきかを算出しました。食事計画策定の過程では、気温の急激な変化や高度など、操縦士たちが置かれる厳しい物理的環境も考慮しました。

テーラーメードのメニュー

これらのデータを用いて、カシス博士のチームは操縦士それぞれに11の異なる食事とスナックから成るメニューを作成。 2012年と2013年に実施したピカール、ボルシュベルグ両氏のシミュレーション飛行でメニューのテストを行い、食品の摂取量、フライト前後の体重と蛋白質のバランスなどを測定しました。

その結果に基づき、NRCチームは機内滞在の状況に合わせて食事を改良し、操縦士たちの食の好みを知るため、何度も食味テストを行いました。

「操縦士たちとの協働で、当然ながら、個人個人で好みが違うことが分かりました。たとえば、一人は野菜料理を好み、もう一人はチョコレートが嫌い、といったことです。また、味見の機会を持ち、メニューについて操縦士たちの同意を得ることは大切でした。いつものようには食欲の出ない環境の中でも実際に食べてもうらことが肝心ですので。」とカシス博士。

食品の重量がカギ

食品の収納と提供も難しい課題でした。翼長はボーイング747よりも長いのですが、ソーラー・インパルス機の重量はファミリーカー程度しかありません。 つまり、ネスレの研究者たちは、パッケージも含め、搭載する全ての食品飲料の重量を注意深く考慮しなければならないという訳です。



フライト一回あたりの食品総重量は2.4キログラムを超えてはならず、液体は3.5リットル(水2.5リットル、スポーツ飲料1リットル)を超えることは許されません。 

扱いやすさは最優先事項であり、パッケージには、こぼれにくいよう、スープや飲み物にはパウチや、開ければカップになる“flexi cup”などが採用されました。パウチ入り食品の温めには特別に設計された、自ら発熱するバッグが使用されました。

人工保存料を使わず新鮮さをキープ

食品を効果的に保存するため、ネスレのチームは調理前の材料を特殊なパッケージに入れ、その後加熱処理するというプロセスを開発しました。このプロセスにより、食品の新鮮さを封じ込め、食品本来の舌触りが最長3カ月、人工保存料不使用で保たれます。

パッケージは使いやすさと軽量であることに加え、気圧変動に対しての耐性も物理的にテストされました。 

ソーラー・インパルス機は3月初旬にアブダビを離陸しましたが、カシス博士は、5か月にわたる旅の間、ネスレのチームが操縦士たちの食事と栄養ニーズをモニターし管理することに、この上なく興奮している、と述べています。

技術的イノベーションを紹介

ソーラー・インパルスとのパートナーシップを通じて、ネスレはまた、サステナビリティ関連の教育活動を支援し、このプロジェクトのこれまでの実績とインパクトの最大化に協力します。



今回の太陽光エネルギー使用の世界記録への挑戦は、サステナブル飛行の可能性についての認識に挑戦するための試みですが、カシス博士は彼女の専門分野においても何が可能なのかを示すプラットフォームを提供したと考えています。 「ソーラー・インパルスのために設計し、準備した食品を通じて、ネスレの技術的イノベーションを紹介することができました。 長年の研究とフライト中の操縦士たちから得られるデータは、このような長期耐久プロジェクトでの食のあり方についての理解を今後長年にわたり押し進める助けとなるでしょう。」とカシス博士は述べています。

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